薬剤師夫婦の日常

子供のことや薬の話

2025-08-01から1ヶ月間の記事一覧

高齢者せん妄と薬剤選択 ― ロゼレム®か、デエビゴ®か、抗精神病薬か

薬剤師夫婦/夫です。 症例を起点に 85歳女性。入院中に自分の年齢を誤認し、さらに入院している事実を理解できない状態が出現した。急性かつ変動性を伴うこの症状は、典型的なせん妄である。 高齢者のせん妄に直面した際、薬剤師として注目すべきは「薬剤に…

帯状疱疹治療における内服+外用併用は必要か

薬剤師夫婦/夫です。 1. 帯状疱疹の標準治療 帯状疱疹は水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化によって発症する疾患であり、早期の抗ウイルス薬全身投与が治療の基本である。発症から72時間以内にアシクロビル、バラシクロビル(バルトレックス)、ファ…

ウブレチド長期投与におけるリスク:コリン作動性クリーゼに注意

薬剤師夫婦/夫です。 はじめに ウブレチド(ジスチグミン臭化物)は、コリンエステラーゼ阻害薬であり、排尿障害や重症筋無力症などに使用されてきた薬剤である。しかし本剤は薬理作用が強力かつ持続時間が長いため、長期投与に伴い深刻な副作用を発現する…

インスリン基礎分泌が枯渇した患者におけるグリメピリド少量投与の有効性

薬剤師夫婦/夫です。 はじめに 糖尿病治療において、膵β細胞からのインスリン基礎分泌が枯渇した状態では、血糖管理の基本は強化インスリン療法である。しかし、外来診療の現場では依然としてSU薬(スルホニル尿素薬)が処方される場面もある。その中でもグ…

遅発性ジスキネジアの原因薬と代替の考え方

薬剤師夫婦/夫です。 遅発性ジスキネジアとは 遅発性ジスキネジア(Tardive Dyskinesia:TD)は、長期的に抗精神病薬などを使用した結果、口や舌、手足の不随意運動が出現する副作用である。特に治療が難しく、一度発症すると症状が持続することも多い。し…

おたふくかぜワクの接種間隔とスケジュール

薬剤師夫婦/夫です。 おたふくかぜワクは皮下注 おたふくかぜワクは、生ワクであり皮下注で接種する。添付文書上も「通常、皮下に接種する」と明記されており、筋肉内や静脈内への投与は禁忌である。特に静注は絶対に避けなければならない。 生ワクの接種間…

大腸ステント症例における下剤選択 ― 酸化マグネシウムからモビコールへ

薬剤師夫婦/夫です。 はじめに 大腸ステントは悪性腫瘍などによる閉塞に対して広く用いられる治療手段である。しかしステント留置後も便秘や便塊形成は閉塞・穿孔のリスクを高めるため、適切な下剤選択が重要となる。従来より広く使用されてきた酸化マグネ…

外来メイン薬局における在宅患者訪問薬剤管理指導の算定はなぜ難しいのか

薬剤師夫婦/夫です。 はじめに 薬局業務の中で「在宅訪問指導」を担う場面は増えてきている。制度的には介護保険の「居宅療養管理指導」と医療保険の「在宅患者訪問薬剤管理指導」があるが、実際の現場では介護保険の方が算定されやすく、医療保険は敬遠さ…

ネガティブワードをブランド名にする意図とは

薬剤師夫婦/夫です。 はじめに 一般的に、ブランド名や店名には「安心」「幸福」「健康」といったポジティブな言葉が選ばれる。しかし現実には「ダブルスタンダード」「ストレス」「おやふこう」といった、一見するとマイナスのイメージを持つ言葉を看板に…

外来薬局薬剤師の情報不足とキャリアの合理性

薬剤師夫婦/夫です。 薬剤師として「外来 → 在宅専門薬局 → 病院薬剤師」というキャリアを歩んできた立場から振り返ると、最も強く感じるのは外来薬局薬剤師における「情報の少なさ」である。外来業務は基本的に「患者からの聞き取り」と「処方箋の内容」に…

大腸がんで血便のある患者にリマプロストを継続すべきか

薬剤師夫婦/夫です。 リマプロストとは リマプロストはプロスタグランジンE₁誘導体であり、血小板凝集抑制作用と末梢血管拡張作用を有する薬剤である。臨床的には脊柱管狭窄症に伴う間欠性跛行の改善目的で処方されることがあるが、効果は補助的な位置付け…

シプロキサン注は原則希釈が必要か

薬剤師夫婦/夫です。 はじめに シプロキサン注(一般名:シプロフロキサシン)はニューキノロン系抗菌薬の注射製剤である。臨床現場では「この製剤は希釈が必要か」「バッグ製剤も希釈と書かれているのはなぜか」といった疑問を抱くことが少なくない。本記…

オピオイド切替時における薬剤師の役割と反省点

薬剤師夫婦/夫です。 症例背景 88歳女性、膵癌。予後は約2ヶ月と見込まれていた。家族の希望により、本人には「手術は成功した」とのみ伝えられていたが、患者本人は「なぜ手術が成功したのに痛みと入院生活が続くのか」と繰り返し訴えていた。NRSは10と表…

フェブリク®️による白血球減少とクレアチニン上昇の機序について

薬剤師夫婦/夫です。 はじめに 高尿酸血症治療薬であるフェブリク®️(一般名:フェブキソスタット)は、キサンチンオキシダーゼ阻害薬として広く使用されている。尿酸値を低下させる点で有効性が高い一方で、添付文書には「白血球減少」や「クレアチニン上…

ARB換算の目安:イルベサルタンを中心に

薬剤師夫婦/夫です。 はじめに アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)は、高血圧症や心不全、腎症など幅広く使用されている降圧薬である。しかし同じARBであっても、降圧作用の強さや薬物動態、臨床試験でのエビデンスは薬剤ごとに異なる。そのため、臨床…

カフェインと頭痛の関係:鎮痛薬が効かないときに効く可能性はあるか

薬剤師夫婦/夫です。 はじめに 頭痛は日常的に多くの人が経験する症状である。一般的にはアセトアミノフェン(カロナール®️)やNSAIDs(ロキソニン®️など)が使用されるが、これらが無効な症例も存在する。そのようなケースにおいて、コーヒーやエナジード…

KL-6値の軽度低下をどう評価するか

薬剤師夫婦/夫です。 1. KL-6とは KL-6はMUC1糖タンパクの一部であり、Ⅱ型肺胞上皮細胞に多く存在する。肺胞上皮が障害されると血中に漏出し、その濃度が上昇する。特に間質性肺疾患(Interstitial Lung Disease: ILD)の活動性評価や予後予測の補助指標と…

三人兄弟における長男の役割と負担を減らす工夫

薬剤師夫婦/夫です。 三人兄弟(長男・次男・長女)の構成は、家庭に賑やかさと活気をもたらす一方で、喧嘩やトラブルも少なくない。特に長男は、下の子の手本となる存在として重要な役割を担うことが多い。自分自身が長男である場合、その期待は無意識に高…

日本におけるスタチンの換算と強度分類

薬剤師夫婦/夫です。 スタチンはLDLコレステロールを低下させる効果を有するが、その効果の強さは薬剤ごとに異なる。日本では一般的に、LDL-C低下率を基準として「ストロングスタチン」と「中等度スタチン」に分類されている。以下では、その分類とおおよそ…

蜂窩織炎における点滴抗菌薬選択の考え方

薬剤師夫婦/夫です。 蜂窩織炎は主にA群β溶血性連鎖球菌(溶連菌)や黄色ブドウ球菌を原因とする皮膚・皮下組織の感染症である。発赤・腫脹・熱感・疼痛を呈し、全身症状として発熱や倦怠感を伴うこともある。軽症例は経口抗菌薬で対応可能であるが、発熱や…

ユリス®(ドチヌラド)の有用性と適正使用法

薬剤師夫婦/夫です。 1. ユリス®️の特徴 ユリス®(一般名:ドチヌラド)は、日本で開発された新しい尿酸降下薬で、主に尿酸排泄低下型や混合型の高尿酸血症に用いられます。腎臓における尿酸再吸収トランスポーターURAT1を高選択的に阻害し、尿酸を効率的に…

トリプタン系偏頭痛治療薬の処方日数制限と薬剤師の対応例

薬剤師夫婦/夫です。 結論 法律上・薬価基準上の投与日数制限はないただし、日本頭痛学会ガイドラインでは月10日以内(推奨8日以内)の使用が望ましい処方例としては10回分前後が多く、20回分を超える場合はMOH(薬物使用過多による頭痛)リスク説明が必要 …

外用ステロイドの一般名表記が招く落とし穴

薬剤師夫婦/夫です。 〜官能基の違いと強さ分類の重要性〜 医薬品の特許が切れると、ジェネリック医薬品が登場し、商品名ではなく一般名での処方が増える。内服薬の場合、一般名表記で問題となることは比較的少ない。しかし、外用ステロイドにおいては事情…

クエン酸で血中pHを上げると健康に良いのか?科学的に検証してみた

薬剤師夫婦/夫です。 「クエン酸は健康に良い」「アルカリ化すると疲れにくくなる」──そうした言説を目にすることがある。とりわけ、「クエン酸を摂取して血中pHを上げると体に良い」とする主張は、健康食品やネット情報で時折見かける。 しかし、実際に血…

難聴にステロイド内服は標準治療なのか?

薬剤師夫婦/夫です。 急に耳が聞こえにくくなる「突発性難聴」。誰にでも突然起こりうる疾患であり、できるだけ早期の対応が重要です。この突発性難聴の治療として、ステロイド(副腎皮質ホルモン)の内服は、現在の医療現場で「標準的に使われている治療法…

高カリウム血症はいつから薬剤介入すべきか

薬剤師夫婦/夫です。 血清カリウム値が上昇する「高カリウム血症」は、重篤な不整脈や心停止を引き起こすリスクがあるため、迅速な評価と対応が求められる。では、具体的にどの程度の数値から薬剤による介入を検討すべきなのか。その基準と考え方を整理して…

「剤数」は薬の数ではない?酸化マグネシウムの服用変更で負担金が減る仕組み

薬剤師夫婦/夫です。 処方内容を見直す際、単に薬を減らすかどうかではなく、「剤数」がどうなるかを考えることで、患者負担の軽減につながる場合がある。 今回は、酸化マグネシウムの用法を変更しただけで調剤報酬が下がり、自己負担額も軽減されたケース…

アスパラカリウム散1.8gはグルコン酸カリウム何gに相当するか?

薬剤師夫婦/夫です。 カリウム補正を目的とした製剤選択や切り替えにおいて、「アスパラカリウム散50%をグルコン酸カリウム散に換算すると何gか?」という問いは、現場で意外と多く遭遇する。 流通状況次第であることは前提として、医療安全上の選択肢とし…

テリルジー®️は初回から処方してもよいのか?

薬剤師夫婦/夫です。 吸入薬「テリルジー®」(一般名:フルチカゾン/ウメクリジニウム/ビランテロール)は、喘息およびCOPDに対するトリプル配合製剤として近年注目されている。では、この薬剤を喘息治療の初回導入から処方することは適切なのか?について…

パントール®(パンテノール)は腸管麻痺に効くのか

薬剤師夫婦/夫です。 ―補助的ビタミン製剤の正しい位置づけ― パントール®(一般名:パンテノール)は、ビタミンB₅(パントテン酸)の前駆体である。通常は皮膚粘膜の修復や代謝補助を目的に用いられることが多いが、術後イレウス(腸管麻痺)の場面でも処方…