薬剤師夫婦の日常

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パントール®(パンテノール)は腸管麻痺に効くのか

 

薬剤師夫婦/夫です。

 

 

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―補助的ビタミン製剤の正しい位置づけ―

 

 

 

パントール®(一般名:パンテノール)は、ビタミンB₅(パントテン酸)の前駆体である。通常は皮膚粘膜の修復や代謝補助を目的に用いられることが多いが、術後イレウス(腸管麻痺)の場面でも処方されるケースがある。

 


しかし、ビタミン製剤であるパントールがなぜ腸管麻痺に使われるのか、明確に理解している医療者は意外と少ない。ここではその作用機序と臨床的な意味を再確認しておきたい。

 

 

 

 

 

 

パントールの基本情報

 

 

 

パントールはパンテノールを主成分とし、体内でパントテン酸に変換される。パントテン酸はコエンザイムA(CoA)の構成要素であり、糖質・脂質・タンパク質の代謝に広く関与する。さらに、自律神経系や粘膜修復、神経伝達にも関わるとされており、その代謝促進作用と神経調整作用が腸管麻痺に応用されているのである。

 

 

 

 

 

 

適応と用法・用量

 

 

 

パントールは「腸管麻痺(術後のイレウスを含む)」に対して正式な適応を有する。通常、成人には1回100mgを1日3回経口投与する。注射製剤が用いられることもあり、その場合は1日1〜2回、100〜200mgを静注または筋注する。

 

 

 

 

 

 

効果と限界

 

 

 

パントールはあくまで腸蠕動の「補助的回復」を促すビタミン製剤であり、ネオスチグミンのような直接的な蠕動促進作用は持たない。そのため、機械的イレウス(閉塞型)には効果がなく、禁忌である点に注意が必要である。

 


パントールが用いられるのは、術後の腸管麻痺や一時的な蠕動不全が疑われるケースにおいて、他の支持療法(絶食、補液、離床など)と組み合わせて使う場面である。

 

 

 

 

 

 

他薬との併用と相互作用

 

 

 

重大な薬物相互作用は報告されていないが、まれに含有成分にカルシウムやマグネシウムを含む製剤があるため、ニューキノロン系・テトラサイクリン系抗菌薬との併用時は吸収に注意が必要である。また、整腸剤や漢方薬、消化管運動促進薬と併用された場合、どの薬剤の効果か分かりにくくなることもあるため、投与目的と評価方法を明確にしておくことが望ましい。

 

 

 

 

 

 

実臨床での位置づけ

 

 

 

パントールは即効性こそないが、副作用がほとんどなく、高齢者や併用薬の多い患者にも比較的安心して使用できるビタミン製剤である。特に術後の一過性腸管麻痺において、腸管への過剰な刺激を避けつつ、緩やかに機能回復を促したい症例には適している。

 

 

 

 

 

 

まとめ

 

 

 

パントール(パンテノール)は腸管麻痺に対して適応を有する数少ないビタミン製剤である。直接的な蠕動刺激はないが、代謝促進と自律神経調整という観点から、補助的に腸機能を支えるという位置づけで用いるべきである。

 


閉塞型イレウスへの誤用を避け、補助的投薬としての役割を正しく理解することが、適正使用の鍵となる。