薬剤師夫婦の日常

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高齢者せん妄と薬剤選択 ― ロゼレム®か、デエビゴ®か、抗精神病薬か

薬剤師夫婦/夫です。

 

 

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症例を起点に

 

 

 

85歳女性。入院中に自分の年齢を誤認し、さらに入院している事実を理解できない状態が出現した。急性かつ変動性を伴うこの症状は、典型的なせん妄である。

高齢者のせん妄に直面した際、薬剤師として注目すべきは「薬剤による誘発要因」と「せん妄予防・治療に用いる薬剤の適切性」である。

 

 

 

 

 

 

せん妄を誘発しやすい薬剤

 

 

 

抗コリン作用薬(抗ヒスタミン薬、三環系抗うつ薬など)
ベンゾジアゼピン系(睡眠薬・抗不安薬)
オピオイド(モルヒネ、フェンタニルなど高用量時)
ステロイド(プレドニゾロン、デキサメタゾン)

 

 


まずはこれらの使用状況を確認し、可能であれば減量・中止を検討することが基本戦略である。

 

 

 

 

 

 

せん妄予防に使われる薬剤

 

 

 

 


ロゼレム®(ラメルテオン)

 

 

 

作用機序:メラトニン受容体作動薬。概日リズムを調整する。
エビデンス:ICU患者や術後患者で、投与群はせん妄発症率が有意に低下した(JAMA 2014)。
特徴:非鎮静性で依存性がない。高齢者にも安全。
投与タイミング:夕食直後は吸収が遅れるため、夕食後1時間程度での投与が望ましい。

 

 

 

 

デエビゴ®(レンボレキサント)

 

 

 

作用機序:オレキシン受容体拮抗薬。睡眠導入・維持に有効。
せん妄予防エビデンス:乏しい。むしろ過鎮静による悪化の懸念がある。
位置づけ:不眠症治療薬としては有効だが、せん妄予防薬としては推奨されない。

 

 

 

 

レキサルティ®(ブレクスピプラゾール)

 

 

 

作用機序:ドパミンD2部分作動薬+セロトニン5-HT1A部分作動薬。
適応:統合失調症、双極性障害、うつ病補助。
せん妄での使用:妄想・幻覚が強い場合に短期間投与される。
注意点:高齢者では錐体外路症状・転倒リスクがあり、低用量使用が前提。

 

 

 

 

 

 

 

実臨床での薬剤選択フロー

 

 

 

原因薬の見直し:抗コリン薬・BZD・オピオイドなどを整理。
非薬物療法:環境調整(昼夜逆転是正、睡眠環境の最適化)。
予防薬:ロゼレム®夕食後投与を第一選択とする。
治療薬:症状が強い場合は、リスペリドン、クエチアピン、ブロナンセリン、またはレキサルティ®などを低用量で補助的に使用。

 

 

 

 

 

 

 

まとめ

 

 

 

せん妄の第一歩は原因薬の中止・調整である。
ロゼレム®夕食後投与はRCTでせん妄予防効果が示されており、安全性も高い。
デエビゴ®は不眠治療薬として有用だが、せん妄予防には適さない。
精神症状が強い場合には、抗精神病薬を低用量かつ短期間で補助的に用いる。