薬剤師夫婦の日常

子供のことや薬の話

2025-07-01から1ヶ月間の記事一覧

甘すぎるラグノスが苦手?そんなときの代替案は「モビコール」

薬剤師夫婦/夫です。 高齢者施設や在宅で便秘に対して処方される「ラグノスゼリー」。その甘味やゼリー特有の食感が苦手という声をしばしば耳にする。 そんなとき、有力な代替薬となるのがモビコール®配合内用剤である。 ラグノスとモビコールの違いとは? …

がん患者の「痛み」と向き合う──種類と薬剤の基本整理

薬剤師夫婦/夫です。 がんに伴う痛みは、患者のQOL(生活の質)を大きく左右する。とりわけ、死期が迫る終末期においては、「どれだけ長く生きるか」よりも「どれだけ快適に過ごせるか」が重要な問いになる。その中で、痛みの緩和は極めて重要な治療目標で…

高齢者糖尿病治療におけるDPP-4阻害薬の適正使用を考える

薬剤師夫婦/夫です。 ― シタグリプチン増量よりも、テネリグリプチンへの変更が選ばれた理由 ― 89歳女性、内服中のシタグリプチン50mgで効果が不十分と判断され、100mgへの増量指示が出された症例。しかし、腎機能低下がみられたこと、そして血糖値の絶対値…

ステロイド内服中の感染に注意:CRPは上がらないこともある

薬剤師夫婦/夫です。 プレドニゾロン(PSL)を内服中の患者は、免疫抑制状態にあり、感染症に対して注意が必要である。特にPSL5mgといった一見「少量」とされる投与量でも、患者背景や併用薬によっては免疫機能が低下し、易感染状態が生じうる。 感染症の発…

パーキンソン病治療薬L-ドパと便通異常:便秘と下痢の機序を考える

薬剤師夫婦/夫です。 パーキンソン病治療の中心的薬剤であるL-ドパ(レボドパ)。その主な副作用として有名なのはジスキネジアや幻覚などの中枢性の症状であるが、意外と見逃せないのが「便通異常」である。特に便秘は頻度が高く、病態と薬剤の双方が関与し…

医薬分業の本質と、薬剤師が今、肝に銘じるべきこと

薬剤師夫婦/夫です。 医薬分業とは、本来「医師は診断・処方を、薬剤師は調剤・監査を担う」ことにより、患者にとって安全かつ質の高い医療を実現する仕組みであると説明される。しかし、日本における医薬分業の成立過程を辿れば、その理想よりも政治的操作…

ジェネリック嫌悪と怒鳴り込み:医療現場におけるハラスメントをどう考えるか

薬剤師夫婦/夫です。 ある地方の薬局に、ある日ひとりの医師が怒鳴り込んできたという。 「ジェネリックは嫌いだ。選定療養なんて間違っている。薬局のスタッフがジェネリックをどう説明しているのか、全員の対応を見せろ」と。 その場にいた薬局スタッフだ…

抗凝固薬(DOAC)と抗血小板薬の違いとは?

薬剤師夫婦/夫です。 血栓予防に使われる薬剤には、「抗凝固薬(DOAC)」と「抗血小板薬」の2種類がある。 どちらも血栓形成を抑制するが、その作用機序や適応疾患は全く異なる。 両者の違いを整理しておきたい。 1. 血栓の種類で使い分ける 血栓には大きく…

トラベルミンに含まれるジプロフィリンの正体とは?──薬剤師だからこそ知っておきたい製剤設計の意図

薬剤師夫婦/夫です。 「トラベルミン®️配合錠」といえば、乗り物酔いの定番薬であり、処方箋なしでも手に取ることができる薬として広く知られている。しかし、その配合成分を深く理解している人は意外と少ない。特に注目すべきは「ジプロフィリン」の役割で…

抗ヒスタミン薬と口渇──副作用の正体とは?

薬剤師夫婦/夫です。 抗ヒスタミン薬は、くしゃみや鼻水、じんましんなどのアレルギー症状に対して処方される定番薬である。しかし、その副作用の一つとして意外と見落とされがちなのが「口渇(ドライマウス)」だ。 特に第1世代の抗ヒスタミン薬(ポララミ…

火の通ったマグロでヒスタミン中毒? ― アレルギー様症状の原因を探る

薬剤師夫婦/夫です。 ある日、筆者はスーパーの惣菜コーナーで購入したマグロカツと鶏の唐揚げを夕食に食べた。醤油は賞味期限がやや過ぎた2025年5月のもので、いつもより多めに使用。食後まもなく、顔の火照り、動悸、紅潮、胸部や上腕の発赤、頭痛といっ…

高齢者のそのSU薬は本当に必要か?〜グリメピリド1mg内服中の87歳女性を例に〜

薬剤師夫婦/夫です。 はじめに 87歳の女性患者が、グリメピリド1mgを内服しており、HbA1cは6.4%と良好な数値を示していた。このような症例において、グリメピリドを継続すべきか、中止を検討すべきか。高齢者糖尿病のガイドラインと薬剤特性から、その妥当…

プラスグレルの低用量設計とは何か

薬剤師夫婦/夫です。 冠動脈ステント留置後の血栓予防には抗血小板薬の併用が推奨されており、日本ではクロピドグレルまたはプラスグレルが主に用いられている。その中で「プラスグレル低用量」という言葉を耳にすることがあるが、これは日本における独自の…

薬剤管理サマリーの導入を決めた理由 〜心不全再入院症例から学んだ多職種連携の重要性〜

薬剤師夫婦/夫です。 心不全の薬物治療においては、退院後の薬物継続が予後に大きく関与する。とくに近年のガイドラインでは、ARNI、β遮断薬、MRA、SGLT2阻害薬といった“4本柱”の早期併用が推奨されており、入院中にこれらの薬剤が導入されるケースが増えて…

緩和ケアとACPにおける「6つの視点」──実践に活かすレビュー論文の知見

薬剤師夫婦/夫です。 アドバンス・ケア・プランニング(ACP)は、人生の最終段階における医療・ケアの選択肢を、本人の意思に基づいて明確にしていくプロセスである。特に緩和ケアの現場において、ACPの導入と定着は重要なテーマとなっており、近年のレビュ…

非麻薬性オピオイド「トラマドール」―慢性疼痛・がん性疼痛における位置づけと活用法

薬剤師夫婦/夫です。 トラマドールは慢性疼痛やがん性疼痛に対して幅広く使用される薬剤である。たとえば、慢性腰痛や変形性関節症といった慢性痛には非常に有効であり、特にNSAIDsやアセトアミノフェン単独での疼痛管理が不十分な症例に適している。 また…

アドエア100と250の違いとは?用量による効果差と注意点

薬剤師夫婦/夫です。 吸入薬「アドエア®️(ADVAIR)」は、喘息やCOPD治療に広く使用されている固定用量配合薬である。中でもよく処方されるのが「アドエア100/50」と「アドエア250/50」であるが、この“100”と“250”の違いは何を意味するのか。患者や医療者の…

【解説】カンゾウの副作用「偽アルドステロン症」:なぜ起こる?どんな症状?

薬剤師夫婦/夫です。 漢方薬に含まれる「カンゾウ(甘草)」は、筋肉の痙攣や咳、胃腸の不調などに使われる非常に有用な生薬です。しかし、長期間あるいは高用量で使用すると「偽アルドステロン症」と呼ばれる電解質異常を引き起こすことがあります。 今回…

COPDにビレーズトリを初回導入してよいか? 〜その判断基準と注意点〜

薬剤師夫婦/夫です。 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療において、「ビレーズトリ®️(フルチカゾンフランカルボン酸エステル/グリコピロニウム/ビランテロール)」を初回から導入してよいのか?という疑問を持つ医療従事者は多い。結論からいえば、「全例で…

ESBL産生菌による尿路感染症にホスミシンは使えるのか?

薬剤師夫婦/夫です。 ESBL(基質特異性拡張型βラクタマーゼ)産生菌は、ペニシリン系やセフェム系抗菌薬の多くを無効化するため、治療において大きな課題となる。注射薬であればカルバペネム系が選択肢となるが、外来や軽症例では内服治療が求められること…

イミダプリルは分2投与すべきか?──そのエビデンスと実際

薬剤師夫婦/夫です。 ACE阻害薬であるイミダプリル(タナトリル®️)は、国内では高血圧や慢性心不全の治療薬として広く使用されている。通常は1日1回投与が基本とされているが、現場では1日2回(分2)に増やして投与しているケースも散見される。果たしてこ…

ビタミンB₁₂欠乏性貧血に葉酸は併用すべきか?

薬剤師夫婦/夫です。 ビタミンB₁₂欠乏性貧血(巨赤芽球性貧血)は、赤血球のDNA合成障害によって未熟な大赤血球(巨赤芽球)が出現する病態である。造血機能の障害だけでなく、重度の場合は神経障害も伴うことがあり、治療には慎重な対応が求められる。 ビ…

【90歳以上における抗認知症薬の再考】──ChEIsからレキサルティ少量投与へのシフト

薬剤師夫婦/夫です。 90歳以上の超高齢者に対して、認知症治療薬の選択と継続について再検討する時期が来ている。なかでも、**コリンエステラーゼ阻害薬(ChEIs)**に代表される従来の治療薬は、その有効性に比して有害事象のリスクが高まりやすく、出口戦…

突然の口唇水疱──「羽隠し」の正体は?

薬剤師夫婦/夫です。 先日、知人が「口に白い水ぶくれができた」と皮膚科を受診したところ、医師から「羽隠しじゃないか」と言われたという。 口唇ヘルペスを疑っての受診だったが、まさかの虫が原因との診断に驚いた。 この「羽隠し」とは一体何なのか。医…

【肝性脳症とBCAA】リーバクト継続の意義とは?最新エビデンスから考える

薬剤師夫婦/夫です。 肝性脳症の既往を持つ患者において、再発予防や生活の質(QOL)の維持は治療の大きな柱である。その中で注目されているのが、分岐鎖アミノ酸(BCAA)製剤「リーバクト」の継続的な投与である。 肝性脳症の背景とBCAAの役割 肝硬変に伴…

高齢者医療における「適正な薬物療法」とは何か?

薬剤師夫婦/夫です。 ~STOPP/START・Beers・FORTA・日本ガイドラインの整理~ 高齢者における薬物療法は、年齢や併存疾患、腎機能低下などによりリスクと効果のバランスが複雑になる。ポリファーマシー(多剤併用)やPIM(不適切処方)が日常的に議論され…

がん薬剤師外来介入の重要性

薬剤師夫婦/夫です。 診察前介入こそ、薬剤師が医療に貢献できる最大の場面である 近年、「がん薬物療法体制充実加算」が新設され、薬剤師による診察前の介入が診療報酬として評価されるようになった。これは、単に点数が加わったという話ではない。薬剤師…

緩和ケアとACPにおける「6つの視点」──レビュー論文から見える実践のヒント

薬剤師夫婦/夫です。 ACP(アドバンス・ケア・プランニング)は、患者本人が望む医療やケアを将来に向けて共有・記録するプロセスであり、特に緩和ケアとの親和性が高い。近年、ACPに関するレビュー論文が数多く報告され、その中でも特に実践に有用な「6つ…

自傷行為とADHDに対する薬物治療の考え方

薬剤師夫婦/夫です。 自傷行為に直接の適応を持つ薬は存在しない 自傷行為に対して、現時点で「これ自体」を治療対象とする薬は存在しない。しかし、自傷行為は多くの場合、うつ病や境界性パーソナリティ障害、PTSD、双極性障害といった精神疾患の症状の一…

ブログを毎日書き続けて見えたこと

薬剤師夫婦/夫です。 この1ヶ月、毎日ブログを更新してきた。仕事の合間や移動中、ふとした気づきや現場での出来事、あるいは日常生活の中で感じたことを言語化し、発信し続けた。正直に言えば「続くかどうか」よりも「続けて何が見えてくるか」を確かめた…