薬剤師夫婦の日常

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処方見直し時に注意したいビタミン剤の併用ポイント

 薬剤師夫婦/夫です。

 

 

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〜重複、吸収阻害、検査値への影響に要注意〜

 

 

 

ビタミン剤は副作用が少なく、比較的安全な薬剤として使われることが多い。特にB群ビタミン製剤は、末梢神経障害や倦怠感、口内炎など幅広い症状に対して処方されやすい。

 


しかしその一方で、「安全=見直し不要」と誤解されがちであり、処方の重複や無効な併用、副作用の見落としにつながっているケースも少なくない。以下、処方見直し時に押さえておきたいポイントを整理する。

 

 

 

 

 

 

1. ビタミン剤の重複リスク

 

 

 

複数科受診や院内外の処方をまたぐ患者では、ビタミンB群製剤の重複が散見される。例えば、メチコバール®(ビタミンB₁₂)とビタメジン®(ビタミンB₁、B₆、B₁₂)の併用などである。いずれも、単独製剤と複合製剤を組み合わせて処方されてしまっている例であり、目的が不明確なまま処方が継続されると不要な投与や過剰投与につながる。

 

 

 

 

2. 高用量による副作用や検査干渉

 

 

 

「ビタミン=副作用がない」と思われがちだが、高用量による有害事象が報告されているものもある。

 


例えばビタミンB₆(ピリドキシン)は200mg/日以上の投与で感覚性ニューロパチーを起こすことが知られている。ビオチン(ビタミンB₇)は、TSHや甲状腺ホルモン、心筋マーカーなど多くの血液検査に干渉し、誤った診断につながるおそれがある。ビタミンCは高用量で尿路結石や偽性高血糖の原因になりうる。

 


また、ビタミンDは活性型との重複投与により高カルシウム血症や腎障害を引き起こすことがあり、ビタミンEは抗凝固薬(特にワルファリン)との併用により出血傾向が強まる可能性があるとされる。

 

 

 

 

3. 吸収阻害の可能性がある併用薬

 

 

 

抗菌薬のなかでも、テトラサイクリン系やニューキノロン系は、カルシウムやマグネシウムなどの金属イオンとキレートを形成し、吸収を阻害することで知られている。

 


ビタミン剤そのものが問題になるわけではないが、ビタミン製剤のなかにはCaやMgを含む製剤があり、これらが抗菌薬の吸収を妨げる可能性がある。投与の際は2時間以上間隔を空けるなどの工夫が必要となる。

 

 

 

 

 

 

4. サプリメント・栄養補助食品との併用確認

 

 

 

最近では、患者が自己判断でサプリメントを服用しているケースも非常に多い。医療者が把握していないところでビタミンDの過剰摂取による高カルシウム血症や、ビタミンKの摂取によるワルファリン効果の減弱が起きていることもある。

 


また、ナイアシン(ビタミンB₃)を高用量で摂取している場合には、肝機能障害や皮膚潮紅、血糖変動といった副作用のリスクも無視できない。

 


このため、サプリメントや栄養ドリンク、栄養補助食品(メイバランス®など)の摂取状況をきちんと聴取することが大切である。

 

 

 

 

まとめ

 

 

 

ビタミン剤は「安全だから大丈夫」と思われがちだが、実際には重複投与・副作用・吸収阻害・検査干渉・サプリメントとの相互作用と、処方見直しの中で意識すべき点が多い。

 


特に複数のビタミン剤が併用されている場合には、その目的・効果・副作用のリスクを再評価し、本当に必要な成分に絞り込むことが、薬剤師・医師としての重要な役割である。