薬剤師夫婦/夫です。

蜂窩織炎は主にA群β溶血性連鎖球菌(溶連菌)や黄色ブドウ球菌を原因とする皮膚・皮下組織の感染症である。発赤・腫脹・熱感・疼痛を呈し、全身症状として発熱や倦怠感を伴うこともある。軽症例は経口抗菌薬で対応可能であるが、発熱や広範囲の皮疹、免疫低下例など入院加療が必要な場合は点滴抗菌薬を選択する。
1. 標準的な第一選択(非MRSA想定)
健常者で耐性菌リスクが低い場合、溶連菌とMSSAをカバーするβラクタム系抗菌薬が第一選択となる。
アンピシリン/スルバクタム(ABPC/SBT)
例:スルバシリン® 3gを6時間ごと静注
広域であり嫌気性菌もカバー可能で、混合感染リスクのある場合にも有用である。
セファゾリン(CEZ)
例:2gを8時間ごと静注
MSSAおよび溶連菌に有効。ペニシリンアレルギーがなく、単純感染であれば有力な選択肢である。
2. 耐性菌リスク・重症例
広範囲な感染や糖尿病足潰瘍、免疫不全症例などではグラム陰性菌や嫌気性菌を想定した広域カバーが必要となる。
セフトリアキソン(CTRX)
1日1回投与可能で利便性が高い。高齢者施設入所者などにも適応可能。
ピペラシリン/タゾバクタム(PIPC/TAZ)
緑膿菌を含む広域スペクトラム。免疫低下や複雑性感染例での選択肢となる。
3. MRSAリスクが高い場合
長期入院歴、透析、既往のMRSA保有、医療機関での曝露歴がある場合にはMRSAカバーが必要となる。
バンコマイシン(VCM)
腎機能に応じたTDMが必須。MSSAの場合はβラクタム系に切り替えることが望ましい。
リネゾリド(LZD)
腎機能障害例でも使用可能。長期投与では骨髄抑制に注意する。
4. 抗菌薬選択のステップ
起因菌の推定:健常者か免疫低下例かを確認する。
重症度評価:発熱、白血球増加、CRP高値など全身炎症反応の有無を確認する。
リスク因子の確認:糖尿病、透析、免疫抑制薬使用の有無。
アレルギー歴・腎機能評価:薬剤選択や投与量に影響するため必須。
5. 補足と治療のポイント
抗菌薬開始前に可能であれば血液培養・膿培養を採取する。
治療期間は通常5〜14日間、重症例では延長もあり得る。
抗菌薬治療に加え、患肢の安静・挙上・圧迫療法が局所の腫脹軽減に有効である。
蜂窩織炎の初期対応では、全身状態とリスク因子に応じて的確な抗菌薬を選択することが重要である。特にMRSAカバーは必要な症例に限定し、起因菌が判明すれば早期にde-escalationを行うことが、耐性菌対策と治療成功率の向上に直結する。
