薬剤師夫婦の日常

子供のことや薬の話

【柔軟性】質より早さ

 

薬剤師夫婦/夫です。

 

連日変化のない日はありません。

 

こういう命にかかわる緊急事態では『質』ではなく『早さ』だと思っています。

 

質と早さが兼ね備えられていれば、それに越したことはありませんが、『今あるもの、今ある(正しい)情報、今ある知識』で、『できること、伝えられること、分かること』をする。

 

それは医療従事者として、目の前の患者さんに対して何をすべきかを考えれば答えは見えてきます。

 

具体的には、先週の外出自粛が発出されたとき、その次の営業日には当局のお薬お渡しカウンターにはビニールカーテンを付けました。

 

と言っても、そんな都合よくビニールカーテン、あるいはそれに代わるものがすぐに手に入る訳ありません。

 

でも次の営業日には患者さんはやってきます。

 

外出自粛発出の中、病院を受診して来局する患者さんは、感染の不安を抱えています。

 

医療機関において、コロナウイルス感染のリスクを減らす事は第一優先ですが、加えて少しでもコロナに対する心理的不安要素を減らすのが、薬局の果たす義務だと考えます。

 

外出自粛が発出したその日の夜、ビニールカーテンの代用品として何があるか考えました。

 

ウイルスを通さない材質を調べ、毎日清潔にできる事、すぐに手に入る事を条件に、我が家で使っていたCDウォールと突っ張り棒を薬局に持って行きました。

 

f:id:yakuzaishi--f-f:20200418171031j:image

 

 

見た目には問題はありますが、何もない、何もしないより断然良いと考えます。

 

明らかに会話が薬局よりも少ないコンビニがビニールカーテンを設置しているのをTwitterで確認して、やらない選択肢はあり得ませんでした。

 

結局は寸法を精密に測定した見た目にも素晴らしいアクリル板を付けることになりましたが、それも外出自粛が発出されてから1週間以上経ってからの事です。

 

外出自粛発出後、すぐに何もしていなかったとしたら、もしこれが政治家なら間違いなく批判されてます。

 

とりあえずあるもので代用する。

 

調剤においてもこのような場面には出くわします。

 

処方薬がなく、今から手配していれば次の日のお昼以降になるが、治療はすぐにでも開始した方がいい場合、今ある在庫の薬で代用(処方医の了承を得た上で)することを考えるのは薬剤師の重要な職能です。

 

今回のウイルスの蔓延は様々な事を教え経験させてくれます。

 

イレギュラーが続き疲労が蓄積される日々ですが、人類がウイルスに打ち勝つ日が来る事を信じて今できることを精一杯やります。

【記事】タイトルに騙されない

 

薬剤師夫婦/夫です。

 

新店舗に配属されもうすぐ3か月が経過します。

 

異動当初は、元々の配属店舗の方が忙しく、業務としては新店舗の方が楽になると言われていました。

 

しかし勿論そんなはずはなく、本来やるべき事をやり始めたら仕事は沢山ありました。

 

スーパーハードな棚卸を終え、同行は順調。

 

ドクターや施設の方とのコミュニケーションもしっかりとってます。

 

想定してなかったのはこのコロナウイルスの影響。

 

臨機応変な対応が求められる状況にあり、正しい情報を素早く入手する必要があります。

 

今日はドクターからの問い合わせで、

 

『ニュースで疥癬治療薬のイベルメクチンが新型コロナに効果があると報じられてましたがどうなんですか?』

 

とありましたので、私の見解を述べさせて頂きました。

 

まず、根拠となっている論文がこちら。


https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0166354220302011

 

『The FDA-approved Drug Ivermectin inhibits the replication of SARS-CoV-2 in vitro. 』

 

SARS-CoV-2:新型コロナウイルス感染症の原因ウイルス

 

in vitro:試験管内の

 

ここで注目したいのが、↑in vitroの表記。

 

私の率直な感想としては

 

『まだvitroの段階か。』

 

です。

 

世に出る薬は、まず有機合成や自然界から抽出などされ得られた医薬品候補成分が、目指す標的(酵素蛋白など)と反応、親和性を持つかどうかを評価します。

 

次にラットなどの動物から得た培養細胞と反応させ同じく評価します。(標的蛋白との反応と培養細胞での評価は前後することもある。)

 

ここまでがvitroです。

 

ここまでの評価で有意差がでれば、マウスやラットなど動物に投与、哺乳類へと進み、最後にヒト、臨床試験へと進みます。(in vivo)

 

通常、臨床試験だけでも数年はかかります。

 

何故これほど時間がかかるのか。

 

過去に医薬品として使用された薬が、後々になって健康被害、催奇形性を持っていたことがわかった、いわゆる薬害という問題があった為です。

 

医薬品候補成分の蓄積性などで服用後の副作用などがどの程度継続するかは未知であり、時間をかけなければ評価できません。

 

vitro→vivo このようなプロセスを経てやっと医薬品として世に出るのは、今回の自然発生したウイルスに対して人類が戦う手段として、『薬という異物』を用いる時は必ず、人為的な二次災害が起きないようにしなければなりません。

 

目の前の感染症を食い止めないといけない、気持ちは焦りますが、特効薬として世に出た薬で二次災害が起きては元も子もありません。

 

ドクターへは、根拠とされる論文をお見せした上で、

「vitroの段階です。まだこれを受けて新型コロナ感染症に対しての臨床試験を開始したとの情報は見当たらなかったので先が待たれる段階かと考えます。」

と返答しました。

 

ネットで検索すれば情報はすぐに得られます。

 

その情報をどのように評価し、人に説明するのか、個々の知識や思いやり(不安を煽るような情報は敢えて与えない)が試されている気がします。

 

 

【情報】何が正しいのか

 

薬剤師夫婦/夫です。

 

今日は情報収集について。

 

理系学生なら一度は原著論文を読み、そこから得られる情報を吟味し考察し自分の見解を述べた経験があると思います。

 

今、その時の経験が生きる力となって必要となる時期にあると感じています。

 

具体的には、このコ○ナウイルスによるパンデミックにおいて、何が正しくて何が正しくない情報なのかを判断しなければならない状況です。

 

間違えば大切な人を失いかねません。

 

知識が命に直結する事態と危機感を新たにしています。

 

ご存知の通り、薬物治療における臨床試験にはエビデンスレベルがあり、デザインされた試験によって科学的根拠の信頼性が異なります。

 

各原著論文についても、論文が掲載されている雑誌のインパクトファクターや引用回数について吟味し、信頼に値するものか判断しなければ、自身の見解に揺らぎが生じます。

 

また、医薬品情報の正確性についても正しく知らなければなりません。

 

情報の種類にはその加工度によって一次資料~三次資料があります。

 

一次資料は原著論文など。

 

  • 加工度は低い分、情報が早く手に届きますが、信頼性に乏しく、正確性に欠けます。

 

二次資料はPubMedなどの情報検索ツール。

 

  • 原著論文を検索する機能であり、様々な論文を比較し、より正確な情報を得ることができます。

 

三次使用は教科書です。

 

  • PubMedなどに投稿された多くの原著論文から導かれた、より確かな情報を集約したものでエビデンスレベルがMAXのものしか載りません。

 

  • ただし、掲載には時間がかかる為、教科書に乗った段階でもう古い情報になっている可能性があります。

 

このように医療の情報を吟味する為だけでも知識を持ってなければ情報を評価することさえできません。

 

尊敬する人が言っているから、身近な信頼できる人が言っているから、みんなが言っているから、、、

 

これら全て科学的な根拠は乏しく、議論になりません。

 

科学的根拠を持って、議論すればいつか正解にたどり着きます。

 

正解にたどり着くのに時間がかかるのも事実です。

 

自分のできる限りことをして『待つ』ということも大切です。

 

不安に苛まれて、感情的になっている方を見かけたので。

 

ここは冷静に状況を把握し、理系らしく合理的・理論的に行動することが求められていると感じたので記事にしてみた次第です。

 

【回診同行】チーム医療への参画

 

薬剤師夫婦/夫です。

 

今日は最近メインの仕事について。

 

週一回、高齢者住宅の回診(医師の診察)に薬剤師として同行しています。

 

回診では患者さんの体調変化や治療の経過などを確認し必要な処置、治療を行います。

 

治療の中心的な役割を担うのは勿論医師ですが、最近のトレンドはチーム医療であり、変化に柔軟な医師ほど率先して上手く利用/取り入れ、多職種各々の職能を生かして治療にあたっています。

 

薬剤師に求められているのは薬物治療であり、診療科目に関わらず、薬の事なら『なんでも』答えられる必要があります。

 

・・・なかなかのプレッシャーです。

 

6年間薬の事だけ勉強してきたにもかかわらず、薬の事を聞かれて『わかりません』は許されません。

 

最低限、『調べます』 で時間がかかっても返答しなければなりません。(時間ももらえないこともあります。)

 

抗真菌薬のコレとコレはどう違うの?

 

〇〇(病名)だと思うけど何を使ったらいい?

 

コレの成分はコレと一緒?

 

などなど。

 

この環境、私はとても刺激的で楽しんでいます。

 

これまで、薬局薬剤師として外来患者さんと主に話をしてきましたが、医師の診察を間近でみてすぐさま服薬指導ができる。

 

より質の高い薬物治療ができることにやりがいを感じています。

 

やっと薬剤師として職能を存分に発揮できている気がします。

 

と同時に、しっかり勉強しておかないと医師からもその他医療従事者からも信頼してもらえなくなるので、日々自己研鑽に努め、さらなる質高い薬物治療に努めます。

 

 

【やりがい】やりたい事とやるべき事

 

薬剤師夫婦/夫です。

 

新店舗の責任者として配属され、すでに1か月が経過しました。

 

責任者が入れ替わり立ち替わりする店舗だった為、在庫管理や店舗内のルールがあやふやで、細かいところを整えるのに毎日ギリギリまで残って仕事をしています。

 

可哀想なのは店舗でずっと働いているパートさんや受付事務の方です。

 

責任者が変わるたびに細かなルールが変わり、それに合わせなければなりません。

 

一日も早く体制を整える為、やるべき事は沢山あります。

 

と同時に、今週から施設に入居されている方の回診に同行することになりました。

 

これまで様々な事情があってできてなかったことを、私が責任者となったからにはあやふやにせず実行していきます。

 

これは私のやりたい事でもあります。

 

私自身、回診同行の経験はありませんが、処方医の処方意図を理解して、患者さんと直接話をして安全な薬物治療を実施する。

 

調剤薬局で院外処方箋を受けていても、なかなか直接医師と話し処方意図を聞く機会は多くないので貴重な経験になる事は間違いありません。

 

この先どのような薬剤師になりたいか、自分に問いかけたとき、『患者さんからも医療従事者からも頼りにされる薬剤師』を目指すべきだと考えています。

 

どちらか一方だけでは不十分であり、双方から信頼されて初めて自分の目指す薬物治療ができる。

 

薬学的観点から薬剤師としての見解を述べて治療に役立てることが、すなわち職能を発揮することであり、それがやりがいにつながると思っています。

 

【剤形】ちょっとの違いが大違い

 

薬剤師夫婦/夫です。

 

今日はサラゾスルファピリジンについて。

 

長ったらしい名前ですが、薬物名です。

 

構造式をほぼそのまま言い表しています。

 

今回はその構造式についてではなく、実際に使われている剤形についてお話ししようと思います。

 

剤形とは薬の形です。

 

薬は錠剤・カプセル・散剤・顆粒剤など同じ薬でもその姿・形を変えて世に出ています。

 

殆どが形が変わっても同じ有効成分なら同じ効能効果を持つものですが、このサラゾスルファピリジンは違います。

 

サラゾスルファピリジン錠

適応:潰瘍性大腸炎

 

サラゾスルファピリジン腸溶錠

適応:関節リウマチ

 

なぜこの違いが生まれるか。

 

簡単に説明すると、錠剤は腸管全体で溶解して腸内細菌により5ーアミノサリチル酸に分解され効果を発揮するのに対して、腸溶錠は腸管で一気に溶解する為に腸内細菌に分解される間もなく吸収され腸管から全身循環に入り、免疫系を抑制します。

 

同じ有効成分でも消化管での吸収のされ方の違いで効能効果にまで違いが出てしまうのは薬の奥の深いところです。

 

他にもこのような例はあるのでまた解説できればと思います。

【引越し完了】 新たなステージ

 

薬剤師夫婦/夫です。

 

2020年 明けましておめでとうございます。

 

今年もマイペースに更新していきますのでよろしくお願いします。

 

さて、本日の話題は環境の変化、新たなステージです。

 

私事ではありますが、会社辞令により新たな責任者として店舗を移る事になりました。

 

仕事は沢山ありますが、今の会社には血が通っており、恩もあるので精一杯やる所存です。

 

思い返せば一年前にすでに異動の話はあったのですが、タイミングの問題で一年越しとなりました。

 

ベストのタイミングと満足しています。

 

今の店舗には3年強勤めました。

 

ご高齢の方が多く、処方内容も重いので決して楽ではありませんでしたが、やりがいがあり、かなり鍛えられました。

 

常連さんとは顔馴染みになり、より生活に入り込んだ健康相談にも乗ることができました。

 

この経験を生かして次の店舗でも安心安全な医薬品の使用に努め、薬剤師にしかできないことを意識して業務にあたります。

 

プライベートでは、私の実家の近くに越してきた為、何かとその恩恵にあずかってます。

 

家の近くには飲食店も多く、比較的住み良いようです。

 

これからよろしくお願いします。

 

【心房細動】用量の決め方

 

薬剤師夫婦 夫です。

 

今日は心房細動について。

 

心房細動とは読んで字の如く、心臓の上の部屋である心房が細く震える病態です。

 

不整脈の一種で、自覚症状のある方もいればない方もいます。

 

自覚症状の有無に関わらず、薬物治療が必要となるのには理由があります。

 

左心耳血栓

 

人間には『これ、人間の体に必要ある??』という部分がいくつかあります。

 

そのうちの一つが左心耳と呼ばれる部位です。

 

心臓の左心室に存在する、耳のように出っ張りのある部分です。

 

何の為に出っ張ってるのかはまだわかっていません。

 

ただ、この部位、心房細動を持つ方には致命傷となる原因を作る場になりえてしまいます。

 

心房細動で血液の流れが滞るとこの左心室の左心耳に血栓、血の塊が形成されてしまいます。

 

この血栓が何かの拍子に左心耳を抜け出し、全身循環した場合どうなるか。

 

ご想像の通り、脳に詰まれば脳塞栓となります。

 

これを防ぐ為には心房細動を治すか、血栓を作らせないようにするか。(あるいは左心耳を閉じるか)

 

年齢などを考慮して手術を選択する場合(一回で完全に心房細動が治るとは限らない)もあれば、薬物治療でイベントのリスクを下げる選択になります。

 

DOACと呼ばれる抗凝固薬はいくつか存在しており、様々な臨床試験を経て日本の保険診療でもちいられています。

 

今日も新規でDOACの内服を開始される患者さんの来局がありました。

 

「心房細動と言われました。自覚症状は特にありませんでした。」

 

まずは何故飲む必要があるのか、服薬意義を理解してもらわなければ離脱して適切な薬物治療が行えません。

 

また、用法用量に問題はないか確認する必要があります。

 

DOACの種類によって、用法用量に違いがあります。

 

1日2回飲むものもあれば1日1回で済むものもあります。

 

『1日1回で済むならその方がいいに決まってる。』

 

と思われた方、その通りなんですが、飲み忘れた場合の服薬のない間(一回の飲み忘れで、1日1回の薬なら24時間血中薬物濃度が低下した状態が続くが、1日2回なら12時間で済む)のイベントリスクを考慮すると必ずしも1日1回が良いとは限りません。

 

お歳で飲み忘れが頻繁にありそうな方は1日2回のDOACの方が適している可能性があります。

 

さらに、用量については、年齢、体重、腎臓の機能について把握しなければ、適正用量であるか判断できません。

 

「病院でも体重を聞かれたけど何で??」

 

それはこういった理由からです。

 

さらにさらに併用薬を確認して飲み合わせを確認します。

 

高齢になると併用薬も自ずと増える傾向にあるのでお薬手帳の活用は必須です。

 

脳梗塞の既往などで他に抗血栓薬を飲んでいれば出血リスクは当然上昇するので注意が必要です。

 

お薬をお渡しするのが薬剤師の仕事ですが、お渡しするだけが薬剤師の仕事ではありません。

 

先に挙げたような事を聞き出し、安全が確認できた上で適切な薬物治療であると判断できてはじめてお渡しすることができます。

 

この時期、風邪で早く薬をもらって帰りたい方も多くいらっしゃると思います。

 

中には待ち時間が長くお怒りになる方もいらっしゃるかもしれません。

 

辛いのはわかります(私も今年インフルエンザにかかりました)が、上記のような、今は無自覚でも命に関わる病気をお持ちの方も薬局にはいらっしゃる事を理解していただけると有り難く思います。

 

医師も100%間違わないとは限りません。

 

薬剤師がお渡しすれば最後、患者さんは間違いがあったとしても服用されます。

 

薬剤師は薬物治療の最後の砦として、頭を使って安心安全を第一に可能な限り速やかにお薬がお渡しできるように努めています。

 

【学会】年一の発表会で考えたこと

 

薬剤師 夫です。

 

今月は二週連続で薬剤師向けの学会に参加してました。

 

年に一回のビッグイベントです。

 

場所は山口県と兵庫県。

 

兵庫県は神戸で規模としては比較的小規模。

 

大学時代所縁の場所ですし、大阪からのアクセスは抜群なので気が楽です。

 

一方山口は下関で大阪からのアクセスは良いとは言えない場所でしたが、新幹線の停車駅小倉から在来線で15分程の思っていたより楽に行けるところでした。

 

特別記念公演はノーベル賞受賞者の本庶佑先生で、沢山の人が講演に耳を傾けていました。

 

私が下関の学会でトピックとなると考えたのは心不全と子育て支援。

 

心不全における薬物治療は近年大きく発展し、特に薬剤師としてはSGLT-2阻害薬の糖尿病合併の慢性心不全(対象はHFpEF)患者に対する有用性は非常に興味深くなってます。

 

また、少子高齢化、核家族化に伴い、子育てに不安を感じている私と同世代の人は多く、

 

それもあってか、今学会では子育て支援に関わる発表が目立ってみえました。

 

薬剤師が子育て中の親、子供に対して薬学的にどのように介入し支援できるか、様々な提案があり実践できる内容も多くありました。

 

特に、印象的だったのは『服薬支援は子育て支援である』という言葉。

 

今の時代、情報はネットから幾らでも手に入れることができます。

 

「薬 飲ませる方法」と検索すればいくからでも子供に薬を飲ませる方法は出てきます。

 

しかし、実際薬を飲ませる親御さんはどこまでの知識・意識を持って子供に薬を飲ませているのか。

 

まず、『飲ませる』という考え方から変えなければなりません。

 

ここが薬剤師の存在意義となるところです。

 

子供が薬を飲みさえすればいいと考える親御さんに対して個々に適した服薬支援、アドバイスを薬剤師は送る事ができます。

 

まず、『飲ませる』から『服薬行動』をとってもらえるように誘導します。

 

いやいやではいつかダメになります。

 

話は服薬の観点から変わりますが、子育ては『根比べ』であると同時に知恵比べだと思います。

 

今の子供の発達状況から本人の考え方を分析しそれを利用して試します。

 

例えば、我が家の子供が歯磨きをするときは、私自身が歯磨きをして見せました。

 

元々子供は歯磨きが嫌いで歯ブラシを見せると泣きわめいていたところ無理やり歯磨きをしていました。

 

それではいけないと、大人のモノを欲しがる習性を利用して、大人も歯ブラシに歯磨き粉をつけて歯磨きをすることを一連の流れから全て目の前で見せました。(私は夜お風呂場で歯磨きをするので主にお風呂場で一緒にお風呂に入る時に)

 

すると自分から自分の歯ブラシを要求し、ブラシを自分から口の中に入れるようになりました。

 

今では大人が歯磨きを見せなくても自分の歯ブラシを自分からとって歯磨きをします。

 

一歳半の我が家の子供はまだ服薬する機会がなかったので服薬行動をとった事はありませんが、歯磨き同様の考え方で今服薬行動を起こさせるとすると、大人が薬(に見立てた薬、つまり乳糖など)を飲む様子を繰り返し見せると思います。

 

勿論子供の発達状況によっては粉薬が嚥下機能的に不向きであったり、食べ物を混ぜる時もその物が嫌いにならないように注意が必要となる為、剤形などの工夫は服薬行動をとってもらう前に分析して大人が選択しておかなくてはなりません。

 

こうした分析と実験を繰り返すことが子育てだと考えているので『服薬支援は子育て支援である』と言う言葉は私の中でもしっくりきました。

 

今絶賛子育て中の親御さんがこの記事で、薬剤師がどんな子育てをしているのか少し覗き込めたような気分になってもらえると嬉しく思います。

 

 

 

【発がんリスク】薬の自主回収

 

薬剤師 夫です。

 

今ニュースに取り上げられてる抗潰瘍薬のラニチジンについて。

 

アメリカの調査で原薬を同じくするラニチジン製剤で発がん性物質が検出されたとのこと。

 

日本でも数社のラニチジン製剤で発がん性物質が検出されました。

 

各メーカーの対応が急がれます。

 

このようなとき、薬剤師としては代替え案を用意しなければならない。

 

私の見解としては適応症に対する用法の観点から、ファモチジンへの切り替えが無難であると考えます。

 

ラニチジンの薬理作用のデータが少ないので比較が(ファモチジンだけでなく、全てのH2拮抗薬についても)難しいが、ファモチジンであれば市販薬もあるのでどうしても受診ができない場合は次の受診までの繋ぎとして選択肢に加えられる点でも有用ではないでしょうか。

 

↑ただし、今回のような緊急事態の場合のみの応急処置的な対処の為、ラニチジンを定期的に服用されてた方のファモチジンへの切り替えは必ず主治医に確認をとってからにしていただきたいと思います。

 

 

話は少し変わりますが、最近喫煙される方がだいぶ減りましたね。

 

受動喫煙に配慮して喫煙者が隔離されてる為でしょうか。

 

この調子で喫煙者と非喫煙者が隔離される世の中が進めばいいと思っているのですが、喫煙される方は今回のニュースを聞いてどのようにお感じなのかとふと思いました。

 

毎日発がん物質を肺から吸入している喫煙者の方は、生産者から

 

「これには発がん物質が確実に入ってます。ですが合法的に販売してます。周りにも発がん物質をばら撒く可能性があるので気をつけてください。」

 

と言われているにも関わらず回収に応じず自粛もせず依存の為発がん物質を摂取し続けているということになります。

 

周りへの発がんリスクを上昇させる危険を承知の上で。

 

薬を飲んで発がん物質が混入していた患者さんにとっては気の毒な話で、一刻も早く中止して治療薬を切り替える必要がありますが、喫煙者は何の治療をしているわけでもなく、ただただ発がん物質を吸入しているわけです。

 

これを読んでも喫煙される方に対する薬剤師としての代替え案は、禁煙外来の受診が妥当だと考えますがいかがでしょうか。

 

 

【相互作用】ロスバスタチンと胃薬

 

薬剤師 夫です。

 

今日は薬と薬の相互作用、飲み合わせについて。

 

標題の通り、ご質問があったのでお答えしました。

 

「ロスバスタチンを毎日朝食後に飲んでいるが、朝食前にムカムカすることがあり、一緒にキャベジンは飲んでも大丈夫?」

 

ロスバスタチンの添付文書(薬の説明書)には併用注意の項目に【制酸剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムの併用で効果減弱】と書かれています。

 

因みに作用機序は不明。

 

制酸剤にもいくつもあり、ここでは限定して水酸化マグネシウム、アルミニウムの併用注意を促していることから、おそらくキャベジンに含まれる制酸剤である炭酸マグネシウムは問題ないと考えられます。

 

ただ、機序が不明である点、ロスバスタチンの構造式に金属原子や反応性の高いハロゲンが含まれることから、相互作用の可能性がゼロではないと判断して、

 

「キャベジンを飲むなら昼食後と夕食後に服用して、ロスバスタチン服用後2時間以内は避けてください。」

 

とお伝えしました。

 

脂質異常症の治療におけるロスバスタチンの効果を最大限発揮させることが今回は優先と判断しました。

 

現場では想定外の質問を投げかけられることが多々あります。

 

構造式に戻って指導することは稀ですが、薬剤師=科学者であるので論理的な解釈と説明が求められることを改めて確認しました。

 

 

【不整脈】薬に出来る事出来ない事

 

薬剤師 夫です。

 

今日は不整脈について。

 

不整脈とは心臓の不規則な運動が原因で動悸やふらつきなどの自覚症状を伴ったり、脳塞栓など他の臓器に影響することのある疾患です。

 

大きくは頻脈性不整脈も徐脈性不整脈があり、前者は心拍数が通常より多く、後者は少なくなります。

 

頻脈性不整脈の治療薬はボーンウイリアムス分類、シシリアンガンビットに代表される抗不整脈薬の様々な使い分けがあり選択の幅は広くなっていますが、徐脈性不整脈に関しては治療薬は少なく、経口薬で効果が期待できなければペースメーカー植込み術などが必要になることもあります。

 

頻脈性不整脈の中でも自覚症状が酷くなければ治療をせず経過観察となるものもあれば、致死的な不整脈に繋がるものもあり、すぐに治療が必要なものもあります。

 

心房細動は文字通り心臓の上の部屋の細かな震えがある不整脈で、近年患者数が増加傾向にあり薬による早期の介入が必要であることが示唆されています。

 

自覚症状を抑える為に過剰な心臓の動きを抑える薬を投与したり、血栓を作らないようにする薬などがつかわれますが、自覚症状に対する効果が不十分であればカテーテルアブレーションで異常な電気信号を遮断する治療が必要になることもあります。

 

不整脈の自覚症状としては動悸を感じる方が多いように思います。

 

その他にも、脈が飛ぶ、ドーンとくる、胸が痛いなど自覚症状は個人によって様々です。

 

原因が心臓かと思っていたら肺だったなど自覚症状だけでは判断できないことも多いため、気になる症状は近隣の医師に相談することをお勧めします。

 

【耳鼻科】めまい

 

薬剤師 夫です。

 

耳鼻科で処方されるめまいの薬について考察します。

 

ベタヒスチン錠6mg 3T分3毎食後 30日分

苓桂朮甘湯 7.5g 分3毎食前 30日分

 

西洋と東洋の薬を併用したシンプルな処方ですが、漢方については構成生薬の観点からシンプルとは言い難いです。

 

ベタヒスチンに関しては内耳の血流増加によるめまい改善を期待してることが考えられます。

 

一方、苓桂朮甘湯については、めまいだけではなく、イライラや動機・息切れ、頭痛にも効果が期待できます。

 

構成生薬の漢字一文字ずつを取ってつけられたこの漢方は、その構成生薬数こそ多くありませんが、一つ一つに重要な役割があります。

 

苓・・・茯苓(利尿作用もあり水を整える)

桂・・・経皮(シナモン、発汗作用)

朮・・・蒼朮(中枢抑制)

甘・・・甘草(調整役)

 

以前にも書きましたが、構成生薬数が少ないので、比較的効果の発現は速やかだと考えます。

 

めまいの原因として最も多い水滞、水の停滞や偏在を改善することを期待し、やや神経質な方には効果の実感が早く、また違うアプローチでの作用が期待できます。

 

めまいの原因は様々なのでセカンドオピニオン含め、改善がみられなければ早めに医師に相談することをお勧めします。

 

【市販薬シリーズ3】中性脂肪の気になる方必見!!

 

薬剤師 夫です。

 

今日は市販薬シリーズ第三弾。

 

エパデールTは、2019年4月15日より要指導医薬品から第1類医薬品に移行されました。それに伴い、適正販売を徹底する為、販売条件も厳格化されました。

 

  1. 薬局などの名称および所在地をあらかじめ登録する。
  2. 適正販売実施の徹底を要請し、実施されていないことを知った時は、販売を停止し、必要な改善のための取り組みを求める。
  3. セルフチェックシートを用いて、血液検査の結果および検査年月が記入されていることなど、販売してもよいことを確認する。
  4. 薬局は販売履歴を管理し、2年間保管する。
  5. 中性脂肪値の改善が見られないとの相談があった場合には、服用中止を指導し、受診勧奨する。
  6. 一度に販売できる数量は、原則1カ月までとする。

 

など、製造販売業者や薬局が取り組むべき措置が厚生省から示されました。

 

なお、セルフチェックシートについては大正製薬ホームページからダウンロードできます。

 

エパデールの有効成分は、イコサペント酸エチル600mgです。

 

処方箋医薬品には600mgの他、300mg900mgがあります。

 

イコサペント酸エチルとは、魚に含まれる🐟良質な脂肪酸で、中性脂肪の減少に寄与します。

 

血液検査で高値を指摘された方、日頃の食事を見直し、適度な運動を心掛けたうえで、このエパデールを服用して頂くと動脈硬化などのリスクを下げることができるのではないでしょうか。

 

青魚を取られる際は、尿酸の値にもご注意下さい。

 

青魚の摂取は尿を酸性化し、尿酸の排出を低下させます。

 

適量であれば摂取も問題ありませんが、高尿酸血症の方は青魚の摂取量にご注意を。

 

【睡眠】半錠か一日おきかどっちがいいか

 

薬剤師 夫です。

 

今日は睡眠導入剤について。

 

患者さんからの質問

 

「少しずつ減らそうと思うが半錠にして飲む方がいいのか、一日おきに飲むのがいいのかとっちがいいの?」

 

なかなかの質問です。

 

経口ステロイドなどは漸減で中止することが有名です。

 

睡眠薬に関しても突然やめるのではなく、漸減で期間を設けて行う必要があります。

 

患者背景

 

この方は半年以上睡眠不足に悩み、夜中もずっと起きてる感覚があると言います。

 

医師には寝てるはずと言われたので、睡眠ウォッチで睡眠がとれているか確認しようとしたが最適な睡眠ウォッチが見つからず断念。

 

ゾルピデム10mgで何とか睡眠の感覚を取り戻せたが満足できず、スボレキサント20mg開始。

 

ゾルピデムと併用していたところ、夜中の無意識行動→前向性健忘が発現しスボレキサント15mgに減量。

 

ゾルピデムを出来るだけ減らすよう指導し今回の来局となりましま。

 

アドヒアランスは良好で減量中止の意志はあるようで今回のような質問に至った。

 

指導

 

「睡眠薬の適正な使⽤用と休薬のための診療療ガイドライン」では漸減法が推奨されている為、ゾルピデム半錠を2〜4週間、1/4錠を2〜4週間、隔日を指導します。

 

スボレキサントは継続して頂きます。

 

医科においてもBZD系の処方は制限される傾向にあり、今後ますます乱用に歯止めをかけようと厳しくなることが予想されます。

 

薬剤師も適切な指導で安全に断薬できるよう努めなければなりません。