薬剤師夫婦の日常

子供のことや薬の話

【訪問診療】同行が意味すること

 

薬剤師夫婦/夫です。

 

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(奇跡的に割れなかったワイン)

 

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数年前、初めて訪問診療同行をさせてほしいと会社に申し出た。

 

会社にとって、薬剤師にとって必要だと思ったから。

 

勿論会社で前例がないと良い顔はされなかった。

 

『余計な事を言い出しやがって』

 

と思ったに違いない。

 

でも数年経った今となっては訪問診療同行が加算の対象となろうとしている。

 

つまり、薬剤師の役割としてその仕事に対して国からお墨付きがもらえる。

 

長かった。

 

評価されるのには時間がかかる。

 

幸い前職の会社はその点柔軟であった。

 

同行を始めて、処方箋枚数が増え、店舗の売り上げが上がったことに対して高く評価してくれた。

 

訪問診療に外来薬剤師が同行するのは実はハードルが高い。

 

調剤薬局は限られた人数で店舗を切り盛りしている。

 

一人の薬剤師が2時間店舗を空けること、しかもそれが薬局長となると各方面に調整が必要である。

 

まずヘルプの薬剤師はマストである。

 

その調整がうまくいき、同行ができるようになったとしても、いざ同行するにしても、訪問医だけでなく診察時に同行する看護師や在宅クリニックの受付との申し合わせ、訪問日には患者の状態等を事前に把握しなければならない。

 

そして同行の最中は緊張の連続である。

 

「この人何飲んでた?」

 

「下痢の要因は何か考えられる?」

 

「同効薬の〇〇の⬜︎⬜︎の違いは?」

 

「これ何の薬?」 

 

「〇〇(腎性貧血治療薬)はハーベー7だと何ミリ(規格)開始だっけ?」

 

etc.

 

どんな質問がいつ来るか常に準備が必要である。

 

…私より薬剤師歴の全然長い人から同行する事を伝えた時、

 

「それはあなた(薬剤師夫婦/夫)だからできるんですよ。」

 

と言われた。

 

そんなわけ無い。

 

薬剤師として外来で服薬指導してるならその知識を医師に伝えるだけ。

 

もしそれができないならそれは日頃から患者を誤魔化し、自分を誤魔化しているに他ならない。

 

訪問医に対して私もわからない時はわからない、調べますと伝える。

 

そんな強い信念を持って飛び込んだ。

 

幸運にも、訪問医は薬剤師をうまく使ってくれる素晴らしい先生で、無茶なことを聞くことはなかった。

 

それどころか、アウェーに飛び込んできた私に対して気を使って食事に誘ってくれたりもした。

 

在宅専門薬局の頃も同行させてほしいと会社に申し出たが却下された。

 

理由は時間の調整ができないから。

 

その時は同行以外にも学ぶことが多かったのでそれでよかった。

 

でもたまにCM(ケアマネジャー)などからの依頼で同行できた。

 

その時は報告書に書く内容に困らないし質も全く異なる。

 

訪問した際、事前情報になかった薬が引き出しから出てきて、

 

「これ何の薬?」(医師)

 

一度だけ触ったことがあった昔ながらの薬で泌尿器系の薬であった。

 

「泌尿器科で使われる薬で頻尿を改善します。今の内服薬との併用に問題はありません。」

 

咄嗟の答えができるかどうかが信頼関係構築に大きく影響する。

 

久々の緊張感であった事を覚えている。

 

患者宅の玄関を出ると岡山が一望できた。

 

10階建ての10階で、天気も良く非常に気持ちがよかった。

 

「僕の家あそこら辺かな?」

 

そんなプライベートの話をしてくれた所を見ると『よし!』と思った。

 

信頼を勝ち得られたのかなと思った。

 

訪問診療同行はそんなことの積み重ねである。

 

今も毎週同行している。

 

今だに毎回緊張する。

 

いつ何の質問が来るかわからないので常に緊張感を持っている。

 

そんな同行に対して、この改定で点数がついた事を理由に同行を打診しても訪問医は不信感を持つだろう。

 

そもそも薬剤師はそこに積極的に薬学的介入ができるか疑問である。(ツイート)

 

急に始めてできることではなく、知識があるからできるものでは無い。

 

信頼関係構築には時間がかかる。

 

今回の調剤報酬改定に思うところがあったので記事にしてみた。