薬剤師夫婦の日常

子供のことや薬の話

【腎機能と残薬】疑義照会の内容

 

薬剤師夫婦/夫です。

 

病院でも薬局でも、薬剤師の仕事の一つとして疑義照会がある。

 

疑義照会とは、『医師の発行した処方箋の記載処方意図を明らかにし「重複投薬」「薬剤名」「用法」「用量」「薬物相互作用による禁忌」「投与日数」等の記載不備を発見し安全な医療を提供することで、疑問点や不明な点があるとき、記載内容が適切かどうか薬剤師が確認し、処方箋の作成者(処方医)に問い合わせて確かめること。』(wikipediaより引用)

 

命に関わることもあれば、念の為の確認などもある。

 

そんな中でどのような内容が実臨床で多いのかと言うと、腎機能低下による用量調節(病院)と残薬調整(薬局)である。(個人的見解)

 

病院では検査値が確実に確認できる。

 

さらに年齢だけでなく、体重が分かれば推定ではなく、より正確な腎機能を知る事ができる。

 

腎機能が低いままに健常人と同じ用量で薬を投与する事は、子供に大人と同じ量の薬を飲ませる事にほぼ等しい。(腎機能に影響されない薬もあり、これらは用量調節不要。)

 

つまり、客観的かつ確実な情報をもとに疑義照会ができる為、問い合わせても「適正用量に調節しておいてください」とだけ医師から言われることもある。

 

多忙な医師にとって、診察で診断がつき治療薬が決まれば、あとは後回し(優先順位は低い)となる。(医師にもよるが)

 

診断後、治療薬決定(←ここに関与できるのが薬剤師の診療同行であり、これが理想。訪問診療同行で実践中。)からが薬剤師の仕事である。

 

患者の状態から適正用量を判断するのは医師でなくても良いのではないだろうか。(現状で処方権を持つ医師の裁量)

 

錠剤は飲めるか、小さいものなら飲めるのか、分割して良い錠剤なのか、粉薬しか飲めないのか、粉にしてもよいのか、粉として売られているものがあるのかなどの剤形の選択。

 

治療薬を決定した医師にとってそこは『サービス』の領域ではないかと考えている。

 

薬剤師はそこのプロである。

 

服薬可能な剤形(剤形の種類を把握している)を選択でき、さらには患者の状態から適正用量を判断できる。

 

効能効果による薬剤選択に医師の指定がなければ、薬価(薬の価格)や服薬コンプライアンス(服薬遵守)の観点からも最適な薬剤を薬剤師は提案できる。

 

つまり、より正確な情報がとれる病院において薬剤師の裁量は広く、より高度で質の高い薬物治療が実践できる。

 

   最近では「〇〇の疾患だけど治療薬として何が考えられる?」「A薬とB薬、こんな状態の人にはどっちが良いかな?」と言った問い合わせがある。薬剤師冥利に尽きる話である。

 

一方で薬局においては、検査値が処方箋に記載されていたり、患者自身から検査値を見せてもらう以外の方法で正確で確かな情報を得ることは難しく、私が薬局にいた頃も「90歳とご高齢で小柄な為、腎機能をご確認頂き、CCr〇〇以下であれば△△mgへ減量をお願いします」と言った具合の疑義照会となる。

 

勿論薬局での疑義照会の内容として、腎機能からの用量調節は病院程多くない。

 

薬局における客観的で確かな情報は『残薬(手持ちのお薬の残り)』である。

 

次回の受診が1ヶ月後であるにも関わらず、手持ちが処方箋をもらった時点で半月分以上残っているとしたら、「今回は半月分の薬でいいですか?」と言った介入になり、疑義照会として「手持ちの残が〇〇日分あるので今回は1ヶ月分ではなく△△日分の処方をお願いします。」となる。

 

『余裕を持ってもらいたい』と思われる方もいると思うが、『必要以上の残薬は過量投与の危険性』や『薬剤費の増大(社会保障費の切迫)』が懸念され望ましくないとされている。

 

あくまで、処方薬は次回受診までの薬であり、必要以上の量を持つ事にも意味はない。

 

もし次の受診で薬がA薬→B薬になれば手持ちとして余裕を持って確保していたA薬は無駄になる。

 

「勿体無いから飲み切ってから」は通用しない。

 

診察で変更されれば多くの場合、もはやA薬は患者の状態に合っていない不適切な薬である。(返品もできない)

 

以上のことから残薬を持っておく事に価値がないことは理解してもらえたと思う。

 

別の観点から腎機能による用量調節と残薬調整を比べた時、より薬剤師らしい介入は前者であると考えている。

 

クレアチニン値からCCrを算出、最適な投与回数に落とし込み、用量調節。

 

過量投与による副作用発現を未然に防ぐ仕事である。

 

賛否あることを承知で言うと、残薬調整は薬剤師でなくてもできる。

 

単純な足し算引き算であり、実際前職の薬局では調剤事務員さんが日数まで調整して薬剤師は「残薬調整してます。」とだけ伝えればよかった。(←居宅療養管理指導であり、処方元との事前の取り決めもあった為、患者を待たせることはない。疑義照会としての薬剤師の業務量も関与も少ない。)

 

一般的な薬局は処方元に疑義照会をして日数変更の了承を得なければ薬を患者に渡せない。

 

つまり、薬局薬剤師もより高度な薬物治療に関わる必要があると感じている。

 

それにはやはり【処方意図の把握】が絶対条件であり、そこを理解するには【処方医師とのコミュニケーション】は必須であると考えている。

 

病院はすぐそこに処方医はおり、内線で連絡も容易い。

 

結局はそこの差ではないか。

 

要は『疑義照会の内容からみても、より高度な薬物治療=薬剤師らしい仕事を多くするなら病院。その実践スキルは病院薬剤師としての経験と理解で身につく。それが困難な場合は、処方医師とのコミュニケーションを前提に処方意図の確認』が必要だと思う。

 

薬局薬剤師でも高度な薬物治療の実践は可能であり、私は訪問診療同行が一つの手段として有用であると考えている。

 

少なくとも薬局に閉じこもっていては薬剤師らしいことは実践できないことは確かである。

 

日々の病院での疑義照会を振り返った時に改めて感じる事があったので書き留めてみた。