薬剤師夫婦の日常

子供のことや薬の話

【カルテ】医療機関同士なら共有すべき

 

薬剤師夫婦/夫です。

 

年度末は報酬改定の時期です。

 

この業界は1〜2年に一度国の定める保険の点数の改定があります。

 

多くの人が1〜3割の負担で医療を受けることができていますが、保険点数は国がきっちり定めており、薬局など保険薬局はその中のルールに従って残り7〜9割を国に請求しています。

 

そのルールが変わるのでこの業界の方々は生活がかかっているので情報収集に必死です。

 

なかでも薬局がかかわってくるのが調剤報酬改定です。

 

大手調剤薬局チェーンが世間的に厳しい目で見られ始めてから、『薬局の存在意義』を示す為、薬局も国も双方試行錯誤を繰り返してきました。

 

そしていよいよ、今年の調剤報酬改定では、その変革が明らかとなってきました。

 

まず一番大きく変わってきたのが、モノ(薬)を揃えることには点数(報酬)はつけないという事です。

 

当たり前といえば当たり前ですが、処方箋に書かれた薬を間違いのないようにとりそろえること、それだけでは薬剤師の仕事としては不十分ということになります。

 

まず処方箋の薬が本当にその人に必要なのかどうか。

 

必要な薬だったとして、次はその薬が安心安全に使うことができて、薬物治療が確実になされるのかを判断することが薬剤師の仕事です。

 

ここを判断することが求められています。

 

薬局薬剤師の判断材料は、主に患者からの聞き取りと、処方箋とお薬手帳です。

 

得られる情報として少なく感じませんか?

 

最近では処方箋に(血液)検査値などを載せてくれる医療機関も出てきました。

 

ないよりか全然いいと思います。

 

でもまだまだ不十分です。

 

お薬手帳にまだまだ紙媒体で、家に忘れてきたらその情報はない状況で判断せざるを得ません。

 

今の在宅支援薬局では主に連携をとる診療所のカルテの一部を見ることができます。

 

これまで院外薬局(通常の薬局)で働いてきた私にとっては信じられない情報量です。

 

もはやどこまでが疑義照会でどこまでが単純な確認なのかわかりません。

 

でも問い合わせている内容はほぼ全て通常の薬局であれば疑義照会に匹敵する内容です。

 

(疑義照会とは処方箋の内容に疑問があれば問い合わせ、確認した後でないと調剤してはならない、という薬剤師の独占業務です。)

 

『2錠分1朝食後での処方ですが、頓服でなくて良いですか?』

→頓服へ変更。

 

『利尿剤の減量は処方箋上40mg→20mgではなく、80mg→20mgとなりますがよろしいですか?』

→80mgから40mgへの減量。

 

など一日にこういった変更がない日はありません。

 

これらはカルテの閲覧がなければ通常の外来ではスルーされてた可能性が高い内容です。

 

カルテの共有は地域レベルでは取り組んでいる自治体もあるそうですが、国レベルでの動きではありません。

 

(私の勤める訪問診療クリニックと密に連携する薬局は診療所のご厚意でカルテ閲覧が可能となっている。)

 

電子カルテも様々メーカーがあり、統一することは難しい状況です。

 

ただ難しいからと言って、このまま薬局薬剤師が患者からの聞き取りと処方内容、一部検査値、紙媒体のお薬手帳だけから推測(臨床推論は素晴らしいスキルではあるが)して投薬するのは明らかにリスクです。

 

何より患者の利益になりません。

 

安心安全な薬物治療を進めるなら、絶対に医療機関のカルテ閲覧を処方箋を受けた薬局には可能にするべきです。

 

実際オランダなどの西洋諸国は薬剤師の権限は日本の薬剤師よりも幅広く、カルテの閲覧も可能と聞きます。

 

私にできることは少ないかもしれませんが、少しでも患者の利益になるための仕事ができるように日々積み重ねたいと思います。