薬剤師夫婦/夫です。

はじめに
動物咬傷は一見軽症に見えても、数十時間以内に急速な局所炎症を来すことがある。特に皮膚・皮下組織に感染が波及した場合、蜂窩織炎として重症化するリスクがあるため、初期の抗菌薬選択と治療設計が重要となる。
本稿では、動物咬傷後に蜂窩織炎を疑った症例を想定し、注射抗菌薬から内服抗菌薬へ切り替える際の併用戦略について整理する。
動物咬傷で問題となる感染菌
動物咬傷では、以下の菌種を同時に考慮する必要がある。
口腔内常在菌由来のグラム陰性菌
嫌気性菌
皮膚常在菌(グラム陽性菌)
これらは単一菌感染よりも混合感染として関与することが多く、抗菌薬は「幅」を意識した設計が求められる。
急性期:注射抗菌薬による初期制御
腫脹、熱感、発赤が強く、蜂窩織炎を疑う場合には、初期治療として注射抗菌薬を選択する場面がある。
クリンダマイシン注射は
嫌気性菌カバー
一部グラム陽性菌への有効性
毒素産生抑制の理論的利点
といった点から、急性期の炎症制御において選択されることがある。
改善期:内服へのステップダウン
全身状態や局所所見が改善し、注射治療が不要と判断された時点で、内服抗菌薬へ切り替える。
このタイミングで重要なのが、咬傷特有の菌種カバーが十分かどうかである。
内服切り替え時の併用という選択肢
内服へ切り替える際、
クリンダマイシン内服:嫌気性菌・毒素抑制の継続
アモキシシリン/クラブラン酸:動物口腔由来菌を想定したカバー
を短期間併用する設計は、臨床的に合理性を持つ。
特に以下の状況では併用の意義が説明可能である。
咬傷が深い、または受診まで時間が経過している
炎症が比較的強く、再燃を避けたい
免疫低下など宿主側リスクがある
重要なのは、漫然とした併用ではなく、明確な治療意図を持つことである。
デエスカレーションの重要性
併用を行う場合でも、永続的な2剤投与は不要である。
48~72時間で臨床反応を評価
改善が得られれば単剤治療へ移行
この「出口戦略」を最初から想定しておくことが、抗菌薬適正使用の観点から重要である。
おわりに
動物咬傷に伴う蜂窩織炎では、
初期制御 → ステップダウン → 簡素化
という流れを意識した抗菌薬設計が求められる。
注射から内服への切り替え時における短期間の併用は、状況次第で十分に説明可能な選択肢であり、重要なのは「なぜその組み合わせなのか」を常に言語化できることである。

