薬剤師夫婦/夫です。

大腸憩室炎は、腸内細菌の感染により生じる腹腔内感染症である。発熱や腹痛を伴い、重症化すると膿瘍形成や穿孔に至ることもある。その治療の基本は、腸内細菌(好気性菌)と嫌気性菌の双方をカバーする抗菌薬の投与である。
起炎菌の特徴
主な起炎菌は以下の通りである。
- グラム陰性桿菌(例:大腸菌など)
- 嫌気性菌(例:バクテロイデス属など)
したがって、嫌気性菌を十分にカバーできるかどうかが薬剤選択の鍵となる。
セフメタゾールの特徴
セフメタゾールは第2世代セフェム系抗菌薬であり、嫌気性菌に対しても強い活性を有する。
腹膜炎や虫垂炎、憩室炎などの腹腔内感染症では単剤で使用できる点が大きな利点である。
腎排泄性であるため、腎機能低下時には減量が必要だが、カバー範囲と臨床効果のバランスに優れる。
セフトリアキソンの特徴
セフトリアキソンは第3世代セフェム系抗菌薬で、グラム陰性菌に対する活性は強いが、嫌気性菌に対する効果は乏しい。
そのため、憩室炎に単剤で用いることは不十分であり、嫌気性菌を補う目的でメトロニダゾールとの併用が推奨される。
使い分けの実際
軽症から中等症の憩室炎(腹膜刺激症状が軽い、膿瘍を伴わない)では、セフメタゾール単剤が第一選択となる。
一方、穿孔や膿瘍形成、全身性炎症反応を伴うような重症例では、セフトリアキソンとメトロニダゾールの併用、またはタゾバクタム/ピペラシリンなど広域βラクタマーゼ阻害薬配合製剤の使用を検討する。
まとめ
憩室炎の治療においては、「嫌気性菌をカバーできるかどうか」が最も重要である。
セフメタゾールは単剤で十分な抗菌スペクトルを持ち、軽~中等症例に適している。
セフトリアキソンを使用する場合は、メトロニダゾールの併用が必須である。
結論
軽〜中等症の憩室炎にはセフメタゾールが推奨される。重症例や全身性感染が疑われる場合には、セフトリアキソン+メトロニダゾール併用など、より広範なカバーを考慮することが望ましい。
