薬剤師夫婦の日常

子供のことや薬の話

高齢者の便秘治療におけるモビコール追加の意義

薬剤師夫婦/夫です。

 

 

 

 

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ケース概要

 

 

 

81歳女性。酸化マグネシウム1500mg、麻子仁丸3包を定期内服しているが、便秘が改善せず排便スコアは1の状態であった。主治医から「その他の内服薬との相互作用も踏まえ、追加で何を処方すべきか」と薬剤師に相談があった。

 

 

 

提案の経緯

 

 

 

既存治療(酸化マグネシウム+麻子仁丸)は、塩類下剤と漢方による潤腸作用の組み合わせである。それでも効果が不十分であったため、異なる作用機序を持ち、かつ相互作用の心配が少ない薬剤を追加する必要があった。

 


ここで提案したのが、ポリエチレングリコール(PEG)製剤であるモビコール®である。

 

 

 

モビコール®️の特長

 

 

 

モビコール®️は非吸収性の浸透圧性下剤であり、腸管内に水分を保持することで2日後の自然排便を促す。

 


代謝や吸収を受けないため薬物相互作用はほぼ皆無。
電解質異常のリスクは少なく、高齢者や多剤併用患者にも安全性が高い。
習慣性も乏しく、長期投与に適している。

(本邦では慢性便秘の適応)

 

 


既存治療と作用機序が異なる点が大きな利点である。

 

 

 

用量設定の考え方

 

 

 

主治医からは「モビコールLDを2包で開始すべきか、1包でよいか」という相談もあった。

 


便秘の重症度を考えると2包開始も選択肢に入る。
しかし今回の症例は多剤併用である高齢者であり、安全性を最優先すべき状況である。
そのため、まずは1包から開始し、効果不十分であれば2包に漸増する提案とした。

 

 


PEG製剤は比較的安全だが、過剰に効いてしまうと下痢や脱水を招き、転倒やADL低下につながるリスクがある。したがって「少量から開始し、効果を見て増量する」というステップアップ方式が実臨床では望ましい。

 

 

 

まとめ

 

 

 

高齢者便秘では、塩類下剤や漢方だけでは不十分なことも多い。その際にモビコールを追加することは、相互作用の少なさと安全性の高さから合理的な選択である。特に多剤併用例では、まず1包から開始し、効果を確認して2包へと調整していくことが推奨される。

 


薬剤師が「なぜその薬を選ぶのか」「なぜその用量なのか」を根拠を持って説明できることは、主治医の信頼を得る上で重要である。