薬剤師夫婦/夫です。

はじめに
気管支喘息の標準治療は吸入ステロイド(ICS)を中心としたステップアップ治療である。しかし、高齢者や認知症患者、あるいは嚥下障害や手技の困難さを伴う患者では、吸入療法自体が実施できない場合がある。このような「吸入困難」例においては、内服薬を主体とした治療戦略が求められる。さらに、大動脈瘤の既往を有する患者では、心血管系への影響を最小限に抑えた治療選択が不可欠である。
内服薬の選択肢
1. ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)
モンテルカストやプランルカストに代表されるLTRAは、喘息における炎症性メディエーターであるロイコトリエンを阻害する薬剤である。内服が容易であり、心血管系への副作用も少ないため、吸入困難例における第一選択肢となる。特に循環器リスクを有する患者において安全性が高い。
2. 内服ステロイド
急性増悪時にはプレドニゾロンなどの内服ステロイドが有効である。ただし長期連用は副作用(骨粗鬆症、糖尿病、高血圧など)が多いため、短期間のレスキューとしての使用に留めるべきである。
3. テオフィリン徐放製剤
テオフィリンは気管支拡張作用を有するが、有効性は限定的である。加えて、血中濃度のモニタリングが必要であり、副作用として頻脈や不整脈、血圧上昇を起こすことがある。大動脈瘤の既往を有する患者にとっては循環器への負担が懸念され、最終選択肢として慎重に用いるべき薬剤である。
大動脈瘤既往患者における留意点
大動脈瘤は血圧上昇や頻脈によって破裂リスクが高まる。β₂刺激薬(ツロブテロールテープを含む)やテオフィリンは交感神経刺激作用を有し、循環器系への負荷を助長する可能性がある。したがって、大動脈瘤既往患者ではこれらの薬剤は相対的禁忌に近い位置づけとなる。
実践的な治療アルゴリズム
- 吸入困難を確認する
- 第一選択はLTRA内服
- 効果不十分なら短期の内服ステロイドを追加
- やむを得ない場合にのみ低用量テオフィリンを慎重投与(血中濃度モニター必須)
- 常に循環器科と連携し、心血管リスクを評価
おわりに
吸入困難かつ循環器リスクを抱える喘息患者では、従来の「吸入中心」の治療アルゴリズムをそのまま適用することはできない。LTRAを軸にした内服治療が現実的であり、ステロイドは短期使用に留めるべきである。テオフィリンは歴史的に用いられてきた薬剤であるが、大動脈瘤の既往がある患者では安全性の観点から最終選択肢にとどめることが妥当である。
