薬剤師夫婦の日常

子供のことや薬の話

【データの読み方】言葉だけでは誤解を招く?!

 

薬剤師夫婦/夫です。

 

医師より、薬Aについて、

 

「なんか良くないデータでてたよね?」

 

と言われました。

 

少し前になりますが、確かに薬Aと同系統の薬Bの比較試験において、薬Aの方が薬Bよりも心血管イベントリスクが高いとのデータが有名雑誌(インパクトファクター、論文雑誌の信頼度が高い)に掲載され、ザワつきました。

 

読み方によっては『薬Aを服用すると心血管イベントリスクを上げる』とも読み取れてしまう為です。

 

しかし、それは大きな誤解で、薬Aの服用と自然発生的に発症する心血管イベントとの有意差はなかったのです。

 

要するに薬Aが心血管イベントのリスクを上げていた訳ではなく、薬Bが(何故か)心血管イベントリスクを下げていたということになります。

 

「じゃあ薬Bを使えば良いじゃん。」と思われるかもしれませんが、薬Aと薬Bとでは排泄経路が異なる為、一概に全ての方に薬Bが良いとも限りません。

 

このようにデータの読み方(論文のデータの見せ方/まとめ方もあります)によって、【言葉】だけでは誤解を招いたり間違ったイメージを与えかねません。

 

「薬Aで大きな病気にかかる可能性が高くなる。」と間違ったデータの読み方、情報を聞いて服用しようと思うでしょうか。

 

『テレビ』や『広告の見出し』など、簡単に得られる情報には気をつけなければいけません。

 

特に週刊誌などで忘れた頃にやってくる『飲んではいけない薬』も、その【言葉】を読むと服用されてる方はすぐにでも中止したくなるでしょう。

 

しかし実際にその【言葉】の根拠となっているデータを読み解くと、間違った読み方、意図的にねじ曲げられた読み方(データの見せ方)をしていることが一目瞭然です。

 

薬剤師は理系の科学者です。

 

得られたデータから結果をまとめ分析し考察するプロです。

 

客観的にデータを読み解くことができるので何が正しくて、間違っているのか、或いはどちらともいえないのかを根拠を持って示すことができます。

 

今回、医師の質問に対しては、

 

「薬Aと薬Bとの比較試験においては薬Aが薬Bよりも心血管イベントリスクを有意に上昇させました。しかし、薬Aの服用と自然発生的に発症する心血管イベントリスクとの有意差はなかったことから、薬Bが心血管イベントリスクを低下させたと考えられます。因みに薬Aと薬Bとでは1日服用回数や排泄経路が異なります。」 

 

と答えました。

 

結局対象患者には薬Bが開始となりましたけど。笑

 

まぁこれを聞けば薬Aを一切処方しない理由にはならないでしょう。

 

薬剤師ってちょっと面白くないですか?