薬剤師夫婦の日常

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火の通ったマグロでヒスタミン中毒? ― アレルギー様症状の原因を探る

 薬剤師夫婦/夫です。

 

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ある日、筆者はスーパーの惣菜コーナーで購入したマグロカツと鶏の唐揚げを夕食に食べた。醤油は賞味期限がやや過ぎた2025年5月のもので、いつもより多めに使用。食後まもなく、顔の火照り、動悸、紅潮、胸部や上腕の発赤、頭痛といった全身症状が出現した。

 


安静にしていたところ、2時間ほどで症状は自然と治まった。納豆は問題なく食べられたことから、大豆アレルギーではなさそう(ソイプロテインを溶かして飲むと喉が痒くなる)と判断したが、いったい原因は何だったのか。

 

 

 

 

 

 

ヒスタミン中毒の可能性

 

 

 

調査の結果、最も疑われたのはヒスタミン中毒(別名:アレルギー様食中毒)であった。これは、魚に含まれるアミノ酸「ヒスチジン」が細菌によって「ヒスタミン」に変化し、そのヒスタミンを摂取することでアレルギーに似た症状を引き起こす中毒である。

 


特にマグロ、カツオ、サバ、イワシなどの赤身魚はリスクが高い。重要なのは、ヒスタミンは加熱しても分解されにくいため、揚げ物であっても中毒が起こるという点である。

 

 

 

 

 

 

ヒスタミン中毒の症状と特徴

 

 

 

厚生労働省の資料や教科書(薬学)によれば、ヒスタミン中毒では以下のような症状が出る。

 

 

  • 顔面の紅潮(特に口の周り、耳たぶ)
  • じんましん
  • 頭痛(ズキズキする)
  • 吐き気、嘔吐
  • 下痢
  • 口のピリピリ感
  • 呼吸困難、意識障害(重症例)

 

 


通常は食後30分〜1時間以内に発症し、数時間以内に自然軽快する。今回の経過はこれらの典型例と一致していた。

 

 

 

 

 

 

食物アレルギーとの違い

 

 

 

誤解されがちだが、ヒスタミン中毒はIgE抗体や肥満細胞を介さないため、食物アレルギーとは別物である。アレルギー症状に似ていても、免疫反応ではなく「化学物質による中毒」であることが重要なポイントである。さらに、アレルギー症状としての『頭痛』は典型的なものではないと判断の材料の一つになった。

 

 

 

 

 

 

実際の対応と店舗への報告

 

 

 

症状は軽快したが、同じ惣菜を購入した他の人にも影響があるかもしれないと考え、購入店舗には匿名で情報提供を行った。これはヒスタミン中毒の再発防止に非常に有効な行動であったと思われる。

 

 

 

 

 

 

今後の対策

 

 

 

  • 惣菜の魚類は信頼できる店で購入する
  • 購入後は速やかに冷蔵(10℃以下)
  • 似た症状が再度出るようなら、ヒスタミン感受性の体質を疑う
  • 必要に応じて抗ヒスタミン薬を常備

 

 

 

 

 

 

 

まとめ

 

 

 

火を通した魚でもヒスタミン中毒は起こりうる。本件を通じて、魚の取り扱いと保存状態がいかに重要かを改めて実感した。身近な惣菜でも中毒は起こり得るため、食後の異変には注意し、必要であれば医療機関への相談をためらわないことが大切である。

 

 

フェキソフェナジン自体の抗ヒスタミン作用は強くないが、専門家の助言を受けた上で内服し受診するのも選択肢となる。(私は内服する前に軽快していった。)