薬剤師夫婦の日常

子供のことや薬の話

【記事】タイトルに騙されない

 

薬剤師夫婦/夫です。

 

新店舗に配属されもうすぐ3か月が経過します。

 

異動当初は、元々の配属店舗の方が忙しく、業務としては新店舗の方が楽になると言われていました。

 

しかし勿論そんなはずはなく、本来やるべき事をやり始めたら仕事は沢山ありました。

 

スーパーハードな棚卸を終え、同行は順調。

 

ドクターや施設の方とのコミュニケーションもしっかりとってます。

 

想定してなかったのはこのコロナウイルスの影響。

 

臨機応変な対応が求められる状況にあり、正しい情報を素早く入手する必要があります。

 

今日はドクターからの問い合わせで、

 

『ニュースで疥癬治療薬のイベルメクチンが新型コロナに効果があると報じられてましたがどうなんですか?』

 

とありましたので、私の見解を述べさせて頂きました。

 

まず、根拠となっている論文がこちら。


https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0166354220302011

 

『The FDA-approved Drug Ivermectin inhibits the replication of SARS-CoV-2 in vitro. 』

 

SARS-CoV-2:新型コロナウイルス感染症の原因ウイルス

 

in vitro:試験管内の

 

ここで注目したいのが、↑in vitroの表記。

 

私の率直な感想としては

 

『まだvitroの段階か。』

 

です。

 

世に出る薬は、まず有機合成や自然界から抽出などされ得られた医薬品候補成分が、目指す標的(酵素蛋白など)と反応、親和性を持つかどうかを評価します。

 

次にラットなどの動物から得た培養細胞と反応させ同じく評価します。(標的蛋白との反応と培養細胞での評価は前後することもある。)

 

ここまでがvitroです。

 

ここまでの評価で有意差がでれば、マウスやラットなど動物に投与、哺乳類へと進み、最後にヒト、臨床試験へと進みます。(in vivo)

 

通常、臨床試験だけでも数年はかかります。

 

何故これほど時間がかかるのか。

 

過去に医薬品として使用された薬が、後々になって健康被害、催奇形性を持っていたことがわかった、いわゆる薬害という問題があった為です。

 

医薬品候補成分の蓄積性などで服用後の副作用などがどの程度継続するかは未知であり、時間をかけなければ評価できません。

 

vitro→vivo このようなプロセスを経てやっと医薬品として世に出るのは、今回の自然発生したウイルスに対して人類が戦う手段として、『薬という異物』を用いる時は必ず、人為的な二次災害が起きないようにしなければなりません。

 

目の前の感染症を食い止めないといけない、気持ちは焦りますが、特効薬として世に出た薬で二次災害が起きては元も子もありません。

 

ドクターへは、根拠とされる論文をお見せした上で、

「vitroの段階です。まだこれを受けて新型コロナ感染症に対しての臨床試験を開始したとの情報は見当たらなかったので先が待たれる段階かと考えます。」

と返答しました。

 

ネットで検索すれば情報はすぐに得られます。

 

その情報をどのように評価し、人に説明するのか、個々の知識や思いやり(不安を煽るような情報は敢えて与えない)が試されている気がします。