薬剤師夫婦の日常

子供のことや薬の話

湿布薬の63枚制限とは

薬剤師夫婦/夫です。

 

 

f:id:yakuzaishi--f-f:20251009231609p:image

 

 

湿布薬には保険診療上の上限があり、厚生労働省の疑義解釈資料により「1処方につき63枚まで」と定められている。これは「1か月あたり」ではなく「1回の処方」に対する制限である。ただし実際の診療では、慢性疼痛患者の多くが月1回処方を受けるため、「月63枚まで」という運用が定着している。この63枚という数字は、1日2枚を31日使用した場合の計算から導かれており、実質的な基準は「1日2枚まで」と考えられている。

 


同月内で複数回処方は可能か

たとえば14日ごとに63枚を処方し、1か月で126枚になる場合、形式上は規定内であっても、支払基金では「分割請求」「漫然投薬」と判断されるおそれがある。やむを得ず複数回処方する場合は、「疼痛の再評価を行うため」「貼付部位が複数であり1日4枚必要」など、医学的な理由を診療録やレセプト摘要欄に明記することが重要である。患者希望のみで同月複数処方することは、保険上は認められない。

 


湿布薬の使用枚数の目安

全国共通の明確な上限枚数は存在しないが、添付文書上の推奨量および査定事例を踏まえ、「1日2枚」が標準的な目安である。痛みの部位が複数に及ぶ場合には1日3〜4枚とすることもあるが、その際も貼付部位や使用目的を明示しておくことが望ましい。漫然とした多量処方は査定対象となる。

 


経皮鎮痛薬と内服薬の違い

経皮吸収型鎮痛薬(ロキソプロフェン貼付剤)は、内服薬と同じ有効成分を含むが、吸収率は大きく異なる。内服では消化管からほぼ完全に吸収されるのに対し、経皮吸収はおよそ7〜10%にとどまる。したがって、貼付剤1枚の全身吸収量は内服1錠の約1/10程度であり、全身的な鎮痛効果は期待できない。貼付剤の目的は、患部周辺の組織に高濃度で薬を届け、局所的に炎症や痛みを和らげる点にある。

 


安全な使い分けの考え方

経皮剤は局所痛に有効であり、関節や筋肉など痛みが限局する部位に適している。一方、広範囲の疼痛や強い炎症を伴う場合には内服薬が効果的である。同成分の内服薬と貼付剤を併用すると、副作用リスク(胃潰瘍や腎障害)が高まるため、同時使用は原則避けるべきである。

 


まとめ

湿布薬の63枚制限は「1処方あたり」であり、形式を守っていても実質的な過量投与は査定対象となる。経皮鎮痛薬は全身吸収を目的とするものではなく、局所治療薬としての位置づけが正しい。必要な部位に、必要な期間だけ適正に使用することが、最も安全で効果的な鎮痛管理につながる。