薬剤師夫婦の日常

子供のことや薬の話

【TERMS】サレド®の管理

 

薬剤師夫婦/夫です。

 

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サレド®(一般名:サリドマイド)は、かつて世界的な薬害事件を引き起こした薬剤であり、その後、免疫調整薬として再評価されたものの、いまもなお極めて高い催奇形性を持つ毒薬として厳格に管理されている。その管理体制が近年、大きく変わったことをご存知だろうか。

 

 

 

最新の管理システム「TERMS(タームス)」とは

 

現在、サレド®を取り扱うすべての医療機関では、TERMS(Thalidomide Education and Registration Management System)という電子管理システムが導入されている。これは藤本製薬が製造販売元となったことで導入された、新たな妊娠予防支援体制であり、専用のタブレット端末を用いて患者・医師・薬剤師の三者間の情報管理と同意確認を行う。

 


医療従事者は服薬前に患者の妊娠可能性を評価し、必要に応じて妊娠検査を実施、TERMS上での登録・承認・指導確認を経て、最大28日分の処方が可能となる。このプロセスはすべて電子的に記録され、トレーサビリティが確保される点が従来と大きく異なる。

 

 

 

現場のリアルと薬剤師の役割

 

当施設でも最近、サレド®に関するTERMS説明を藤本製薬の担当者から受けたばかりである。印象的だったのは、その徹底した管理体制の説明であり、まさに麻薬以上の慎重な取扱いが求められていることを再認識した。

 


特に、妊娠可能年齢の女性従事者が製剤に触れることすら避ける(他にもある)よう求められる点は、他の医薬品には見られない厳格さであり、薬剤師としての責任の重みを改めて感じた瞬間であった。

 

 

 

今後の展望

 

サレド®に限らず、レブラミド®(レナリドミド)やポマリスト®(ポマリドミド)にも同様の管理システム(RevMate、PomMate)が存在する。これらを適正に運用し、患者の安全と治療効果を両立させるには、薬剤師が制度・薬剤・リスク管理のすべてを理解し、現場で実行する力が求められる。

 


TERMSは単なる電子システムではない。「再び同じ悲劇を繰り返さない」ための、未来志向の薬剤管理体制である。薬剤師の専門性と倫理観が、いまほど問われる時代はないのかもしれない。

 

 

 

おまけ

愛用してる医薬品

化合物数が多いほど効果判定が困難であり、薬剤数も同様である。これがポリファーマシーの問題点とされる理由である。

プロペトを例に挙げる。有効成分は白色ワセリン、添加物はジブチルヒドロキシトルエン(抗酸化剤)のみ。シンプルな構成で安全性が高いと考えられる。

白色ワセリンの純度(不純物の少なさ)は、黄色ワセリン<白色ワセリン<プロペト<サンホワイトの順であるとされる。

感染リスクを最小限にするため、創部洗浄を徹底し、ワセリンで保護し経過観察。このような基本的管理は実践すべき重要な対応である。