薬剤師夫婦/夫です。

AIが進化し、誰もが容易に専門的な情報へアクセスできる時代になった。非薬剤師であっても、一定の知識を身につけ、薬剤師と遜色のない受け答えをすることが可能である。こうした現実に、危機感や恐怖を覚える薬剤師がいるのも理解できる。
しかし、冷静に見れば、薬剤師という職能はこの情報社会において“真っ先に代替され得る職業”の一つである。知識を独占してきた既得権益の構造に依存していては、生き残ることはできない。
その一方で、そうした構造に寄らずとも価値を発揮できる薬剤師が確実に存在する。彼らはタスクシフトを恐れない。むしろ推進する側に立つ。なぜなら、自らの経験と努力に裏づけられた確かな自信があるからだ。
薬剤師の価値は単なる知識量ではない。薬剤部で培った専門性に加え、そこに費やしてきた時間、労力、そして信頼関係の積み重ねが、他の誰にも代えがたい価値を生む。AIが提示する答えが正しかったとしても、「誰が伝えるか」によってその重みは変わる。人は、理屈よりも“信頼できる人”の言葉を求めるからである。
国家資格は、そうした信頼の象徴であり、社会的な保証でもある。人々が肩書きや身分に弱いのは、結局「安心の裏づけ」を求めているからだろう。
だが、資格に守られるだけの薬剤師は、いずれ時代に淘汰される。資格を越え、信頼を自ら築ける薬剤師こそが、これからの時代を生き抜く存在である。
