薬剤師夫婦の日常

子供のことや薬の話

【カリウム製剤】換算と補正効率を整理してみた

 

薬剤師夫婦/夫です。

 

f:id:yakuzaishi--f-f:20250615075058j:image

 

低カリウム血症の治療において、経口カリウム製剤の選択と用量調整は非常に重要である。特に昨今の医薬品流通状況の不安定さから、入荷できる製剤が限られる中で、「K値が2.2mEq/L」など重度の低カリウム血症では、補正量の不足は致命的になりかねず、製剤ごとの特徴を理解した上で投与設計することが求められる。

 


今回は、代表的な経口カリウム製剤である塩化カリウム(KCl)、アスパラカリウム(K-Asp)、グルコン酸カリウム(K-Glu)について、それぞれの1単位中のmEq換算値、吸収効率、使用量の目安を整理した。

 

 

 

 

実効的な補正量を意識した選択を

 

単純にmEq換算だけを見ても意味がない。たとえばアスパラKは1錠あたり1.8 mEqと少なく、吸収効率も40%程度とされるため、体内で実際に補正されるカリウムはさらに低下する。

グルコン酸Kは比較的吸収効率が高く、消化管刺激も少ないためゆっくり補正したい症例に向いているが、重度の低カリウム症例では明らかに補正が追いつかないこともある。

 


塩化カリウム(KCl)は最も効率よくカリウムを補正できるが、腸管刺激が強く、用量には注意が必要である。K-カリウムのような徐放製剤で分割投与すれば、ある程度は消化管への負担を抑えつつ、効率よく補正できる。

 

 

 

 

 

 

症例に応じた使い分けが鍵

 

たとえばK値が2.2mEq/Lの患者に対して、グルコン酸K 4mEq × 6包/日(24mEq/日)を14日間継続すると、補正量は336mEqとなり、理論上は+1.0〜1.3mEq/Lの回復が期待できる。しかし、腎排泄や持続的な消耗がある症例では補正不十分となる可能性もある。

 


そこで、初期は9包/日(36mEq)で数日間補正を進めた後、6包/日に減量して維持するような調整も有効である。重要なのは、「急激な補正は避けつつ、必要なカリウム量はしっかり投与する」ことである。

 

 

 

おわりに

 

低カリウム血症における治療設計では、製剤ごとの特性と吸収効率を考慮したうえで補正計画を立てることが肝要である。KCl製剤は即効性が高く、グルコン酸Kはマイルドで継続補正に向いている。アスパラKは軽度補正のサポートとしての位置づけが妥当であろう。

 


今後も現場で使いやすい「カリウム補正早見表」などを整備し、チーム内で情報共有していくことが、より安全で効率的なカリウム補正につながる。

 

 

 

おまけ

オススメの常備薬

芍薬甘草湯は、急性の筋けいれん、特にこむら返りに対して即効性を示す漢方薬である。芍薬が筋緊張を緩和し、甘草が鎮痛・抗炎症作用を持つことで、服用後数分以内に効果を実感する例も多い。高齢者や運動後の筋痙攣を経験する者にとっては、常備薬としての価値が高い。一方で、甘草に含まれるグリチルリチンは、長期連用により偽アルドステロン症を引き起こし、低カリウム血症や高血圧の原因となることがある。したがって、芍薬甘草湯は短期的・頓用的に使用することが望ましく、漫然とした継続投与は避けるべきである。

 

 

f:id:yakuzaishi--f-f:20250615075134p:image