薬剤師夫婦/夫です。

点滴にKCl(塩化カリウム)を混注した際、液が黄色く見えることがある。ビタミンB製剤を混ぜたように見えるため、「遮光が必要ではないか」と感じる人も多い。
しかし、この黄色はビタミンB₂(リボフラビン)による着色であり、光分解性はあるものの、KCl投与時に遮光は不要である。
リボフラビン着色の目的
一部の注射用KCl製剤には、リボフラビンが着色剤として微量に添加されている。
その目的は、KClを混注したことを一目で確認、均一に混ざっているか確認できるようにするためである。KClは本来、無色透明の液体であり、他の輸液や電解質製剤との識別が困難である。このため、調製や投与の際に誤投与を防ぐ工夫として、識別性を高める目的で黄色が付けられているのである。
遮光の必要性について
リボフラビンは光に対して不安定な物質であり、光を浴びると退色や分解を起こす。そのため、外箱やアンプルを開封する前は遮光して保管するよう指示がある。
しかし、点滴投与中は時間的にも短く、またKCl自体は光に対して非常に安定である。したがって、投与中に遮光する必要はない。
つまり、遮光の指示はあくまで「保管中の品質を保つため」であり、「投与時の安定性」に関するものではないという点を理解しておくべきである。
現場で起こりやすい誤解
黄色く見える輸液を見ると、「ビタミン剤が混ざっている=遮光が必要」と反射的に判断してしまうことがある。しかし、KClの黄色は光に弱い薬剤が入っているからではなく、単にリボフラビンによる着色である。
この色づけは識別のための工夫であり、光による成分変化や有害反応を起こすものではない。つまり、ビタミン複合製剤のように光分解を受けやすい薬剤とは、根本的に異なる理由で黄色を呈しているということである。
まとめ
KCl製剤が黄色く見えるのは、着色成分としてリボフラビン(ビタミンB₂)が含まれているためである。このリボフラビンは光にやや不安定であるため、外箱や未開封状態では遮光が推奨されている。しかし、実際の投与時に遮光する必要はない。
つまり、KClの黄色は混注済みであることを視覚的に確認しやすくするための工夫であり、遮光の必要性とは直接関係がない。
「黄色い液=遮光必須」と短絡的に考えるのではなく、なぜその色なのか、何の目的で着色されているのかを理解しておくことが重要である。
この理解をもっておけば、誤解を防ぎ、医療現場でより適切な判断ができるはずである。
