薬剤師夫婦/夫です。

がんに伴う痛みは、患者のQOL(生活の質)を大きく左右する。とりわけ、死期が迫る終末期においては、「どれだけ長く生きるか」よりも「どれだけ快適に過ごせるか」が重要な問いになる。その中で、痛みの緩和は極めて重要な治療目標である。
本記事では、がん患者に起こる痛みの種類と、それに対応する薬剤について整理する。
痛みの種類とその特徴
がん性疼痛は、主に以下の3種類に分類される。
① 体性痛(鋭く局所的な痛み)
骨・皮膚・筋肉など体の表層部や支持組織が原因となる痛みである。
骨転移や術後の創部痛、筋肉の炎症などが代表例。
【特徴】鋭い・はっきりした局所の痛み
② 内臓痛(鈍く広がる痛み)
肝胆膵や消化管、肺などの臓器に生じる痛み。
腫瘍による臓器圧迫や腸管けいれんなどが該当する。
【特徴】鈍く、広がるような不快感を伴う痛み
③ 神経障害性疼痛(しびれ・焼けつくような痛み)
がんや治療によって神経が損傷・圧迫されて起こる痛み。
脊髄圧迫や化学療法による末梢神経障害、帯状疱疹後神経痛など。
【特徴】電撃のような痛み、焼ける感覚、しびれなど
各痛みに対する薬剤の基本
痛みの種類ごとに、薬剤の選択肢とその位置づけを以下に示す。
体性痛
軽度:アセトアミノフェン、NSAIDs(ロキソプロフェン、セレコキシブ)
中~重度:オピオイド(モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル など)
内臓痛
軽度:アセトアミノフェン、NSAIDs
中等度以上:オピオイド(とくにモルヒネ)、ブスコパン(けいれん性)
補助療法:ステロイド(浮腫や炎症の緩和)
神経障害性疼痛
プレガバリン、ガバペンチン(抗てんかん薬)
アミトリプチリン、デュロキセチン(抗うつ薬系)
オピオイド(補助的に用いる)
痛みは「混在」する
現実には、これらの痛みが1人の患者に複数同時に存在することが多い。骨転移による体性痛に加え、神経圧迫による神経障害性疼痛が重なることもある。
そのため、痛みの種類を正しく見極め、複数の薬剤を適切に組み合わせることが重要となる。
薬だけでなく、「評価」も治療の一部
痛みのコントロールにおいては、薬剤の選択と同じくらい、「患者が今、どんな痛みを抱えているか」を把握し続けることが重要である。
痛みの強さや性質は時間とともに変化しやすく、定期的な評価と柔軟な調整が求められる。
緩和ケアにおける薬の意味
緩和ケアにおいて薬物治療の目的は、延命ではなく、「残された時間の質の向上」である。
家族との会話、好きな食事、静かな眠り──それらの時間を支えるために、薬がある。
