薬剤師夫婦/夫です。
花粉症は、春先から多くの人を悩ませるアレルギー疾患である。くしゃみ、鼻水、鼻詰まりといった症状は、日常生活の質(QOL)を低下させ、仕事の生産性も著しく下げる。特に、症状が酷い場合には咳が止まらなくなり、呼吸困難を伴うケースも報告されている。
抗ヒスタミン薬の進化
抗ヒスタミン薬は、花粉症をはじめとするアレルギー症状の治療に欠かせない薬剤である。近年では、理想的な抗ヒスタミン薬を目指した開発が進んでいる。以下の画像は、効果期待度と眠気軽減期待度を軸に、各抗ヒスタミン薬をマッピングしたものである。
注目すべきは、フェキソフェナジンPSE配合剤(プソイドエフェドリン配合)の位置付けである。これは理想に近いポジションにあり、鼻詰まりに強い効果を発揮する。しかし、PSEは抗ヒスタミン薬ではなく血管収縮作用を持つため、動悸や不眠といった副作用に注意が必要である。
抗ヒスタミン薬の改良ポイント
現在の抗ヒスタミン薬は、旧世代(第一世代)と比較して次の点で進化を遂げている
選択性の向上
ヒスタミンH1受容体に選択的に結合し、他の受容体への影響を減らす。
光学異性体の利用
有効成分のうち、眠気を引き起こす成分を除外。
多機能化
ヒスタミン以外のアレルギー反応物質(ロイコトリエン等)を同時にブロック。
製剤工夫
貼付薬(皮膚吸収型)など、利便性の高い製剤形態の開発。
運転への注意喚起
抗ヒスタミン薬の副作用として、眠気は避けて通れない課題である。日本の基準では、注意レベルが以下の3段階に分類されている:
❌ 運転禁止:運転等を控えるよう注意喚起。
🔺 注意喚起:運転や機械操作に注意。
⭕️ 特に記載なし:眠気のリスクは低いとされる。
ただし、⭕️に該当する薬剤でも、患者の体質や症状(花粉症による疲労感等)によって眠気が生じる可能性がある。よって、服用中は十分に注意を払うべきである。
医師からの問い合わせ「眠気の少ない抗アレルギー薬は?」
臨床現場では「眠気の少ない薬はないか」という問いを受けることが多い。この場合、ビラスチン(ビラノア®)を提案することが適切である。(対象患者の年齢や緊急性により、提案内容は異なる。) ビラスチンは、他の第二世代抗ヒスタミン薬と比較して中枢神経系への移行が少なく、眠気の副作用が少ないことが複数のエビデンス(例:Eur J Clin Pharmacol. 2014 Jan;70(1):31-41)で示されており、(医療用の中で)シェアも高い。だが、私個人は花粉症に対してデスロラタジン(デザレックス®)を使用している。同じく眠気が少なく、食事の影響を受けにくい点で選択している。ロラタジン(クラリチン®)の活性代謝物(DCL)であり、代謝の影響を受けにくく、併用薬にも効果を左右されにくい点で優れている。
結論
抗ヒスタミン薬は日々進化を遂げ、理想の抗ヒスタミン薬に近づきつつある。しかし、眠気などの副作用や、PSE配合剤のような特有のリスクも存在する。医療者としては、患者の症状やライフスタイルに応じた最適な薬剤選択を行うとともに、運転や機械操作に関する注意喚起を徹底すべきである。
おまけ
愛用してる医薬品
化合物数が多いほど効果判定が困難であり、薬剤数も同様である。これがポリファーマシーの問題点とされる理由である。
プロペトを例に挙げる。有効成分は白色ワセリン、添加物はジブチルヒドロキシトルエン(抗酸化剤)のみ。シンプルな構成で安全性が高いと考えられる。
白色ワセリンの純度(不純物の少なさ)は、黄色ワセリン<白色ワセリン<プロペト<サンホワイトの順であるとされる。
感染リスクを最小限にするため、創部洗浄を徹底し、ワセリンで保護し経過観察。このような基本的管理は実践すべき重要な対応である。
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