薬剤師夫婦/夫です。
診察前介入こそ、薬剤師が医療に貢献できる最大の場面である
近年、「がん薬物療法体制充実加算」が新設され、薬剤師による診察前の介入が診療報酬として評価されるようになった。これは、単に点数が加わったという話ではない。薬剤師が治療設計の一端を担う存在であるという認識が、制度として公式に示されたことに他ならない。
この加算は、外来化学療法において初回〜3回目の静脈投与時に、薬剤師が診察前に副作用チェックや処方提案などの関与を行うことで算定される。重要なのは、「診察後」ではなく「診察前」であるという点だ。診察後にいくら介入しても、既に処方は決定されており、薬剤師の意見は“アフターサービス”にとどまってしまう。
だからこそ、診察前または診察中のタイミングで医師と連携し、治療方針の擦り合わせを行うことが、最も実効的な関与となる。
しかし、当院にはがん外来がないため、この加算を現時点で算定することはできない。だが、それを理由に診察前の薬剤師介入をやめることはしない。むしろ、今後高齢者のポリファーマシー解消や慢性疾患管理の分野においても、同様の加算が創設されることを期待しつつ、先駆的に実践を積み重ねていきたいと考えている。
薬剤師は“薬を揃えるだけ”の存在ではない。医師の治療方針を理解し、患者の全体像を把握したうえで、薬物治療の最適化を図る。そこに介入と提案がある。個性の強い医師と比べ、患者・看護師・家族・他職種との橋渡し役としてのコミュニケーション能力に長けている薬剤師は多い。この強みを活かさない手はない。
制度が後からついてくるものであるならば、今やっていることがいずれ「点数になるべきこと」だと信じ、まずは実践する。点数があるからやるのではなく、本質的に価値があるからやる。
そうした姿勢こそが、薬剤師の未来を切り拓いていくと信じている。