薬剤師夫婦の日常

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【90歳以上における抗認知症薬の再考】──ChEIsからレキサルティ少量投与へのシフト

 

薬剤師夫婦/夫です。

 

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90歳以上の超高齢者に対して、認知症治療薬の選択と継続について再検討する時期が来ている。なかでも、**コリンエステラーゼ阻害薬(ChEIs)**に代表される従来の治療薬は、その有効性に比して有害事象のリスクが高まりやすく、出口戦略(Deprescribing)を意識すべき段階に入っている。

 

 

 

コリンエステラーゼ阻害薬は「もはや標準」とは言えない

 

 

 

ChEIs(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)は、軽度から中等度のアルツハイマー型認知症に対して一定の効果が認められてきた。しかし、高齢になるほど有害事象の発生頻度は上昇し、75歳以上で15%、80歳以上で20%に達するとされる。これを踏まえると、90歳以上では20%を超えていると考えるのが自然であり、ベネフィットとリスクのバランスは大きく崩れつつある。

 


もはや、「とりあえずChEIs」ではなく、「なぜ今、ChEIsを続けるのか」を問い直す時代といえる。

 

 

 

メマンチンの限界と位置づけ

 

 

 

メマンチンはNMDA受容体拮抗作用を持ち、過剰な神経興奮を抑制する機序で、BPSD(興奮・不穏・攻撃性)に対して一定の抑制的効果を期待できる薬剤である。消化器系副作用が少なく、少量から使える点は利点であるが、効果発現に時間を要し、急性期の精神症状には不向きという側面もある。

 


そのため、メマンチンはChEIsの代替薬ではあるが、万能ではないという認識が必要である。

 

 

 

現代的選択肢としての「レキサルティ少量」

 

 

 

近年注目されているのが、レキサルティ(ブレクスピプラゾール)少量投与である。これは非定型抗精神病薬に分類されるが、D2受容体やセロトニン受容体に対する部分作動薬という独特の作用機序を持ち、アルツハイマー型認知症に伴う興奮・易刺激性に対する使用が広がっている。

 


少量(0.25〜0.5mg)で導入可能
錐体外路症状や過鎮静が出にくい
BPSDへの即効性に優れる

 

 


という特長があり、超高齢者の精神症状に対する「第一選択肢」となりつつある。

 

 

 

認知症治療の目的は「進行抑制」から「生活の質」へ

 

 

 

90歳を超えた時点で、認知症治療の目的はもはや「病態の進行を遅らせること」ではなく、「生活の質(QOL)を維持すること」に移行するべきである。コリンエステラーゼ阻害薬の漫然投与は再考し、必要に応じて減薬や中止(出口戦略)を検討する。一方で、精神症状による生活障害が強ければ、即効性と安全性を兼ね備えた薬剤の少量使用が重要となる。

 


その意味で、レキサルティ少量投与は、今後の認知症治療の中核を担う可能性を秘めている。