薬剤師夫婦の日常

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【病態】レボドパ中止による悪性症候群のリスクと対応

 

薬剤師夫婦/夫です。

 

パーキンソン病治療において、レボドパ製剤(たとえばネオドパストン®️)の突然の中止は、極めて重大な合併症を引き起こす可能性がある。その代表例が「悪性症候群」である。

 

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ネオドパストンの急な中止は危険

 

レボドパはパーキンソン病における主要な治療薬であり、中枢ドパミン濃度を維持するために不可欠な存在である。これを急激に中止すると、ドパミンが枯渇し、自律神経や筋肉、意識状態に異常が生じる。特に進行期の患者では、ドパミン依存性が高くなっており、中止の影響が如実に現れる。概ね1週間以内。

 

悪性症候群を疑う症状

 

悪性症候群は、ドパミン製剤の急な中断や急減により発症する重篤な状態である。以下のような症状が急速に出現した場合、強く疑う必要がある。

 


発熱(38℃以上)

感染症を伴わないにもかかわらず持続する高体温


全身の筋強剛

特に四肢や体幹に強い固縮がみられ、動きが著しく制限される


意識障害

傾眠、錯乱、昏迷など、急激な意識レベルの低下


自律神経症状

頻脈、血圧変動、大量の発汗または発汗停止


血液検査異常

特にCK(CPK)の著明な上昇(1000単位以上)、白血球増多


腎機能障害の兆候

ミオグロビン尿や尿量減少、BUN・Crの上昇

 

 

これらの症状が複数組み合わさって出現する場合には、悪性症候群を念頭に置き、迅速なドパミン刺激の再開と全身管理を行う必要がある。

 

 

 

鑑別疾患と見分け方

 

悪性症候群と似た症状を呈する疾患には以下がある:


重症感染症(肺炎、尿路感染)
せん妄、脱水、栄養障害

 


特にCK上昇や筋強剛が明確であれば、悪性症候群を疑う。

 

 

 

治療と対応

 

最も重要なのは「ドパミン刺激の再開」である。経口が困難な場合は、ニュープロパッチの使用が有効である。加えて、以下の対策が必要となる。

 


十分な輸液による支持療法
体温管理と鎮静薬(例:ベンゾジアゼピン)
腎機能のモニタリング


また、重症例ではICUでの管理が必要になることもある。

 

 

 

まとめ

 

パーキンソン病患者におけるレボドパ製剤の急な中止は、悪性症候群という生命を脅かす状態を引き起こす可能性がある。特に筋強剛・高熱・意識障害・CK上昇が同時に見られた場合は要注意である。医療従事者は、薬の継続が難しい状況でも、何らかの方法でドパミン刺激を維持する工夫を怠ってはならない。

 

おまけ

愛用してる医薬品

化合物数が多いほど効果判定が困難であり、薬剤数も同様である。これがポリファーマシーの問題点とされる理由である。

プロペトを例に挙げる。有効成分は白色ワセリン、添加物はジブチルヒドロキシトルエン(抗酸化剤)のみ。シンプルな構成で安全性が高いと考えられる。

白色ワセリンの純度(不純物の少なさ)は、黄色ワセリン<白色ワセリン<プロペト<サンホワイトの順であるとされる。

感染リスクを最小限にするため、創部洗浄を徹底し、ワセリンで保護し経過観察。このような基本的管理は実践すべき重要な対応である。

 

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