薬剤師夫婦/夫です。
ACP(アドバンス・ケア・プランニング)は、患者本人が望む医療やケアを将来に向けて共有・記録するプロセスであり、特に緩和ケアとの親和性が高い。近年、ACPに関するレビュー論文が数多く報告され、その中でも特に実践に有用な「6つの視点」が整理されている文献が注目されている。以下に、そのエッセンスを紹介する。
1. 意味を伝える
ACPは単なる終末期医療の話し合いではない。「自分らしい生き方を、最期までどう全うするか」を支える価値共有の場である。したがって、ACPの意義や目的を患者・家族に丁寧に説明し、安心感を得てもらうことが第一歩となる。
2. 開始時期を大切に
「いつ始めるべきか」は永遠のテーマである。元気なうちでは実感が持てず、逆に病状が切迫してからでは心身の余裕がない。疾患の進行段階や入退院などの「転機」を捉えて、自然な流れで話題にすることが望ましい。
3. 障壁と促進因子
ACPの普及を阻む要因として、時間的制約や医療者側の経験不足、記録の断片化が挙げられる。一方で、促進因子としては、医療者との信頼関係、多職種連携、施設内での文化づくり、そして組織的なサポート体制がある。これらの要素を可視化・共有することが重要である。
4. 信頼関係とコミュニケーション
ACPを機能させるには、患者・家族と医療従事者の間に確かな信頼が必要である。感情に寄り添い、対話のプロセスを重ねることで初めて、患者の本音や希望が語られる。コミュニケーション能力はACPの要であり、継続的な研修も欠かせない。
5. 文書化と情報共有
話し合いの内容は記録に残さなければ他職種に伝わらず、患者の意向が無視されるリスクもある。ACPの記録は、医療・介護施設間で共有されることで真価を発揮する。電子カルテやACP専用の書式整備も推進