薬剤師夫婦/夫です。

吸入薬「アドエア®️(ADVAIR)」は、喘息やCOPD治療に広く使用されている固定用量配合薬である。中でもよく処方されるのが「アドエア100/50」と「アドエア250/50」であるが、この“100”と“250”の違いは何を意味するのか。患者や医療者の中でも混乱が生じやすい部分であるため、本記事で整理する。
アドエアとは
アドエアは以下2成分から成る配合吸入薬である。
フルチカゾンプロピオン酸エステル(ICS:吸入ステロイド)
気道の慢性炎症を抑える
サルメテロールキシナホ酸塩(LABA:長時間作用型β₂刺激薬)
気道の平滑筋を弛緩し、気管支を拡張する
この2成分の配合比が製品により異なっており、症状に応じて選択される。
アドエア100と250の違い
両者の違いは、ICSであるフルチカゾンの含有量である。
アドエアには「100/50」と「250/50」といった異なる用量が存在するが、この数字はそれぞれの1回吸入あたりに含まれる成分量を示している。
アドエア100/50では、吸入ステロイド(ICS)であるフルチカゾンが100マイクログラム、気管支拡張薬(LABA)であるサルメテロールが50マイクログラム含まれており、これを1日2回吸入するのが基本である。したがって、1日あたりの総投与量はフルチカゾン200マイクログラム、サルメテロール100マイクログラムとなる。
一方、アドエア250/50は、フルチカゾンが1回あたり250マイクログラムに増量されており、サルメテロールは変わらず50マイクログラムである。これも同様に1日2回吸入するため、1日あたりの総投与量はフルチカゾン500マイクログラム、サルメテロール100マイクログラムとなる。
つまり、アドエア100と250で**サルメテロールの総量は同じ(1日100マイクログラム)**であるが、フルチカゾンの総量には2.5倍の開きがある。この違いが、喘息やCOPDにおける治療強度の選択に影響することになる。
用量による効果差と選択基準
ICSの量が多ければ、一般的に抗炎症効果が高くなり、喘息のコントロールが改善されやすい。そのため、中等症以上の喘息やCOPDにおいてはアドエア250/50が選択されることがある。一方で、ICSの増量は以下の副作用リスクも上昇させる。
- 口腔カンジダ症
- 嗄声
- 全身性ステロイド作用(長期使用時)
したがって、治療ガイドラインでは症状をコントロールできる最小限のICS量を用いることが推奨されている。
よくある誤解:「100を1回に2吸入すれば250と同じでは?」
結論から言えば同じにはならない。
例えば、アドエア100/50を1回に2吸入した場合:
フルチカゾン:100 mcg × 2 = 200 mcg
サルメテロール:50 mcg × 2 = 100 mcg
一方、アドエア250/50を1回吸入すると:
フルチカゾン:250 mcg
サルメテロール:50 mcg
つまり、**ステロイド量は近づくが、LABAが過量(倍)**となる。これは副作用(頻脈・振戦・不整脈など)のリスクを高め、安全性に問題がある。用量調整は吸入回数でなく、製剤レベルで行う必要がある。
COPDにおける用量選択
COPD治療においては、一般的にアドエア250/50が推奨上限とされる。ICS過量は肺炎リスクを高めるため、喘息併存がある場合を除き、漫然と500/50製剤を使用することは避けられる傾向にある。
まとめ
アドエア100/50と250/50の違いは、フルチカゾン(ICS)の量である
LABA(サルメテロール)の量は両者とも同じ
ステロイドの増量は効果を高める一方、副作用も増加する
「100を2吸入=250と同じ」は誤解。サルメテロールが過量になる
治療方針はガイドラインに従い、医師の指示のもとで決定すべき
吸入薬は正しい知識のもとで使用することが重要であり、用量の調整や吸入方法の誤解は治療成績に大きく影響する。患者指導の場面でも、数字の意味とその背後にある薬理学的意義を丁寧に伝えていきたい。
