薬剤師 夫です。
今日は様々な適応を持つ薬物について話そうと思います。
薬局に行くと、『今の症状を教えてください。』と書かれていることがあると思います。
薬局薬剤師にとって、初めて来局した患者さんの情報は処方箋と問診票だけです。
病状を把握するには、患者さんからの聞き取りか問診の記入あるいは処方解析をする必要があります。
最も簡単なのは問診での記入です。次が患者さんからの聞き取りで最も難しいのは処方から病態を推察する処方解析です。
薬剤師なら薬からどんな病気なのかわかるんじゃないの?と思う方もいるかもしれませんが、薬と病気は1:1ではありません。
一つの薬が3つ4つの病気に使われることはよくあります。
それら一つ一つを覚えるのは容易くありません。
ではどのように覚えるか。
作用機序
それは作用機序から理解して覚えていきます。(副作用の可能性を考えるなら尚更、作用機序を理解する必要があります。)
例えば、クレンブテロールというお薬があります。
この薬は、尿失禁の治療薬であり、気管支喘息の薬でもあります。
クレンブテロールはβ刺激薬という分類の薬物で、β=受容体を刺激する働きをもっています。
受容体とは、ヒトを形づくる細胞の表面や細胞膜などにある受け皿のことで、その受け皿が刺激されると細胞内で反応が進み、筋を収縮弛緩させたりします。
β受容体はさらにサブタイプがあり、β1〜3まで分類されます。
受容体はヒトの器官毎にその受容体サブタイプの分布が異なります。
気管支平滑筋にはβ2,膀胱の排尿筋にもβ2が多く分布しています。
もうわかりますよね。
クレンブテロールはβ2刺激薬で、特異的に気管支と膀胱に作用する事で効能を発揮する至って原始的な薬です。
作用機序を理解すれば、副作用も予想がつきます。
β2受容体に特異的とは言いつつも、β1もβ3もβ受容体であることには変わりないので、それらに全く影響しないわけではありません。
例えばβ1受容体は、心臓に広く分布するのでクレンブテロールが間違って(あえてこのように表現すると)心臓のβ受容体を刺激すると心筋が収縮します。
これが気管支喘息や尿失禁を治療してる患者さんにあらわれたら動悸という副作用です。
全てが作用機序通りに効能効果、副作用が説明できるわけではありませんが、このように論理的に理解できると薬を覚えるが楽しくなってきませんか?