薬剤師夫婦の日常

子供のことや薬の話

おくすりの話

CKDと高リン血症管理における鉄含有リン吸着薬の位置づけ

薬剤師夫婦/夫です。 はじめに 慢性腎臓病(CKD)が進行すると、腎機能低下に伴いリン排泄が困難となり、高リン血症が生じやすくなる。高リン血症は二次性副甲状腺機能亢進症や血管石灰化のリスク因子であり、CKD-MBD(骨ミネラル代謝異常)の中心的な課題…

ゾピクロンとエスゾピクロンの違い

薬剤師夫婦/夫です。 はじめに 睡眠薬には大きくベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系がある。ゾピクロンとエスゾピクロンは後者に属し、いずれも短時間作用型の睡眠薬である。両者は「鏡像異性体」の関係にあり、似た構造を持ちながらも薬理学的な特…

セフトリアキソンを施設で安全に使うために 〜投与回数だけでなく点滴時間も大切〜

薬剤師夫婦/夫です。 1. セフトリアキソンが施設向けとされる理由 1日1回投与で効果を発揮できる薬剤であること。呼吸器感染症、尿路感染症、胆道感染症など、施設で頻度の高い感染症に幅広く対応できること。調製や投与が比較的簡便で、限られた人員でも運…

本態性振戦とアロチノロール ― 適応と作用機序

薬剤師夫婦/夫です。 本態性振戦とは 本態性振戦は、安静時ではなく手を伸ばす、コップを持つ、字を書くといった動作や姿勢保持時に増強する振戦である。日常生活の不自由をきたしやすく、加齢とともに有病率が上昇する。 振戦にはいくつかのタイプが存在し…

高齢者の便秘治療におけるモビコール追加の意義

薬剤師夫婦/夫です。 ケース概要 81歳女性。酸化マグネシウム1500mg、麻子仁丸3包を定期内服しているが、便秘が改善せず排便スコアは1の状態であった。主治医から「その他の内服薬との相互作用も踏まえ、追加で何を処方すべきか」と薬剤師に相談があった。 …

ゾルピデムは前立腺に影響するのか?

薬剤師夫婦/夫です。 ゾルピデムの特徴 ゾルピデムは非ベンゾジアゼピン系睡眠薬であり、GABA_A受容体のα1サブユニットに選択的に作用して催眠効果を示す薬である。従来のベンゾジアゼピン系に比べて筋弛緩作用や抗けいれん作用は弱く、主に入眠障害の改善…

薬剤師に求められる姿勢と情報更新の責任

薬剤師夫婦/夫です。 先日、久しぶりに調剤薬局で薬を受け取った。 そこでの薬剤師の対応に、同じ職に携わる者として非常に残念な気持ちを抱いた。 高圧的な態度がもたらすもの 服薬指導の場で、薬剤師から発せられる言葉には温度がある。柔らかく患者を包…

クローン病の腹痛に対して処方される薬とは?

薬剤師夫婦/夫です。 クローン病は慢性的に腸管に炎症を生じる難治性疾患であり、その症状の一つに腹痛がある。腹痛は炎症そのものによるもの、腸管の痙攣によるもの、あるいは合併症に起因するものなど、原因によって対応が異なる。本記事では、臨床現場で…

三叉神経性頭痛(TACs)の薬物治療

薬剤師夫婦/夫です。 三叉神経性頭痛とは 三叉神経性頭痛(trigeminal autonomic cephalalgias; TACs)は、顔面の片側に激しい痛みが生じ、同時に自律神経症状(流涙、鼻閉、眼充血など)を伴う頭痛群である。代表的な疾患として、群発頭痛、発作性片側頭痛…

テオドール®(テオフィリン)による精神症状について

薬剤師夫婦/夫です。 はじめに テオドール®(一般名:テオフィリン)は、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対して使用される古典的な気管支拡張薬である。長年にわたり臨床で使用されてきたが、その薬理作用には中枢神経刺激作用が含まれるため、精神症状を…

レボドパ・カルビドパ中止による悪性症候群とその治療戦略

薬剤師夫婦/夫です。 ※パーキンソン病治療薬の急中断による重篤な副作用に注意 ◆ 悪性症候群とは何か? 悪性症候群(Neuroleptic Malignant Syndrome, NMS)は、高熱・筋強剛・意識障害・自律神経症状を特徴とする重篤な薬剤性有害事象である。原因としては…

不完全交差耐性が示唆された症例:ヒドロモルフォンからフェンタニルへのスイッチ

薬剤師夫婦/夫です。 ヒドロモルフォンの効果不十分 ある患者において、強い疼痛に対してヒドロモルフォンを使用したが、十分な鎮痛効果が得られなかった。用量を増加しても痛みの訴えは続き、耐性形成が疑われた。 フェンタニルテープへの切り替え そこで…

ナトリウム125に対する食塩投与設計の評価と注意点

薬剤師夫婦/夫です。 低ナトリウム血症に対してナトリウム補正を行う場面は、特に高齢者や慢性疾患を抱える患者において多い。今回は「Na 125mEq/Lの患者に対して、ソルデム1 200mLに10%NaClを20mL添加し、ポタコール500mLの側管から5時間かけて投与を6日…

尿路感染症にバクタとレボフロキサシンを併用する意義はあるか

薬剤師夫婦/夫です。 尿路感染症の治療において、抗菌薬の選択は耐性菌の発生抑制と副作用リスクの回避という観点から極めて重要である。臨床現場では「併用すればより強力に効くのではないか」という発想が生じることがあるが、実際には必ずしも有効ではな…

高齢者せん妄と薬剤選択 ― ロゼレム®か、デエビゴ®か、抗精神病薬か

薬剤師夫婦/夫です。 症例を起点に 85歳女性。入院中に自分の年齢を誤認し、さらに入院している事実を理解できない状態が出現した。急性かつ変動性を伴うこの症状は、典型的なせん妄である。 高齢者のせん妄に直面した際、薬剤師として注目すべきは「薬剤に…

帯状疱疹治療における内服+外用併用は必要か

薬剤師夫婦/夫です。 1. 帯状疱疹の標準治療 帯状疱疹は水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化によって発症する疾患であり、早期の抗ウイルス薬全身投与が治療の基本である。発症から72時間以内にアシクロビル、バラシクロビル(バルトレックス)、ファ…

ウブレチド長期投与におけるリスク:コリン作動性クリーゼに注意

薬剤師夫婦/夫です。 はじめに ウブレチド(ジスチグミン臭化物)は、コリンエステラーゼ阻害薬であり、排尿障害や重症筋無力症などに使用されてきた薬剤である。しかし本剤は薬理作用が強力かつ持続時間が長いため、長期投与に伴い深刻な副作用を発現する…

インスリン基礎分泌が枯渇した患者におけるグリメピリド少量投与の有効性

薬剤師夫婦/夫です。 はじめに 糖尿病治療において、膵β細胞からのインスリン基礎分泌が枯渇した状態では、血糖管理の基本は強化インスリン療法である。しかし、外来診療の現場では依然としてSU薬(スルホニル尿素薬)が処方される場面もある。その中でもグ…

遅発性ジスキネジアの原因薬と代替の考え方

薬剤師夫婦/夫です。 遅発性ジスキネジアとは 遅発性ジスキネジア(Tardive Dyskinesia:TD)は、長期的に抗精神病薬などを使用した結果、口や舌、手足の不随意運動が出現する副作用である。特に治療が難しく、一度発症すると症状が持続することも多い。し…

大腸ステント症例における下剤選択 ― 酸化マグネシウムからモビコールへ

薬剤師夫婦/夫です。 はじめに 大腸ステントは悪性腫瘍などによる閉塞に対して広く用いられる治療手段である。しかしステント留置後も便秘や便塊形成は閉塞・穿孔のリスクを高めるため、適切な下剤選択が重要となる。従来より広く使用されてきた酸化マグネ…

大腸がんで血便のある患者にリマプロストを継続すべきか

薬剤師夫婦/夫です。 リマプロストとは リマプロストはプロスタグランジンE₁誘導体であり、血小板凝集抑制作用と末梢血管拡張作用を有する薬剤である。臨床的には脊柱管狭窄症に伴う間欠性跛行の改善目的で処方されることがあるが、効果は補助的な位置付け…

シプロキサン注は原則希釈が必要か

薬剤師夫婦/夫です。 はじめに シプロキサン注(一般名:シプロフロキサシン)はニューキノロン系抗菌薬の注射製剤である。臨床現場では「この製剤は希釈が必要か」「バッグ製剤も希釈と書かれているのはなぜか」といった疑問を抱くことが少なくない。本記…

オピオイド切替時における薬剤師の役割と反省点

薬剤師夫婦/夫です。 症例背景 88歳女性、膵癌。予後は約2ヶ月と見込まれていた。家族の希望により、本人には「手術は成功した」とのみ伝えられていたが、患者本人は「なぜ手術が成功したのに痛みと入院生活が続くのか」と繰り返し訴えていた。NRSは10と表…

フェブリク®️による白血球減少とクレアチニン上昇の機序について

薬剤師夫婦/夫です。 はじめに 高尿酸血症治療薬であるフェブリク®️(一般名:フェブキソスタット)は、キサンチンオキシダーゼ阻害薬として広く使用されている。尿酸値を低下させる点で有効性が高い一方で、添付文書には「白血球減少」や「クレアチニン上…

ARB換算の目安:イルベサルタンを中心に

薬剤師夫婦/夫です。 はじめに アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)は、高血圧症や心不全、腎症など幅広く使用されている降圧薬である。しかし同じARBであっても、降圧作用の強さや薬物動態、臨床試験でのエビデンスは薬剤ごとに異なる。そのため、臨床…

カフェインと頭痛の関係:鎮痛薬が効かないときに効く可能性はあるか

薬剤師夫婦/夫です。 はじめに 頭痛は日常的に多くの人が経験する症状である。一般的にはアセトアミノフェン(カロナール®️)やNSAIDs(ロキソニン®️など)が使用されるが、これらが無効な症例も存在する。そのようなケースにおいて、コーヒーやエナジード…

KL-6値の軽度低下をどう評価するか

薬剤師夫婦/夫です。 1. KL-6とは KL-6はMUC1糖タンパクの一部であり、Ⅱ型肺胞上皮細胞に多く存在する。肺胞上皮が障害されると血中に漏出し、その濃度が上昇する。特に間質性肺疾患(Interstitial Lung Disease: ILD)の活動性評価や予後予測の補助指標と…

日本におけるスタチンの換算と強度分類

薬剤師夫婦/夫です。 スタチンはLDLコレステロールを低下させる効果を有するが、その効果の強さは薬剤ごとに異なる。日本では一般的に、LDL-C低下率を基準として「ストロングスタチン」と「中等度スタチン」に分類されている。以下では、その分類とおおよそ…

蜂窩織炎における点滴抗菌薬選択の考え方

薬剤師夫婦/夫です。 蜂窩織炎は主にA群β溶血性連鎖球菌(溶連菌)や黄色ブドウ球菌を原因とする皮膚・皮下組織の感染症である。発赤・腫脹・熱感・疼痛を呈し、全身症状として発熱や倦怠感を伴うこともある。軽症例は経口抗菌薬で対応可能であるが、発熱や…

ユリス®(ドチヌラド)の有用性と適正使用法

薬剤師夫婦/夫です。 1. ユリス®️の特徴 ユリス®(一般名:ドチヌラド)は、日本で開発された新しい尿酸降下薬で、主に尿酸排泄低下型や混合型の高尿酸血症に用いられます。腎臓における尿酸再吸収トランスポーターURAT1を高選択的に阻害し、尿酸を効率的に…