薬剤師夫婦の日常

子供のことや薬の話

三叉神経性頭痛(TACs)の薬物治療

薬剤師夫婦/夫です。 三叉神経性頭痛とは 三叉神経性頭痛(trigeminal autonomic cephalalgias; TACs)は、顔面の片側に激しい痛みが生じ、同時に自律神経症状(流涙、鼻閉、眼充血など)を伴う頭痛群である。代表的な疾患として、群発頭痛、発作性片側頭痛…

テオドール®(テオフィリン)による精神症状について

薬剤師夫婦/夫です。 はじめに テオドール®(一般名:テオフィリン)は、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対して使用される古典的な気管支拡張薬である。長年にわたり臨床で使用されてきたが、その薬理作用には中枢神経刺激作用が含まれるため、精神症状を…

継続することの難しさと教え

薬剤師夫婦/夫です。 中学校の卒業文集に書いた言葉がある。 「部活と勉強の両立」――そして、その次に掲げたのが「何事も継続すること」であった。 小学校の頃、最も印象に残っている担任の先生はスパルタであった。その先生からは「卑怯なことをするな」「…

レボドパ・カルビドパ中止による悪性症候群とその治療戦略

薬剤師夫婦/夫です。 ※パーキンソン病治療薬の急中断による重篤な副作用に注意 ◆ 悪性症候群とは何か? 悪性症候群(Neuroleptic Malignant Syndrome, NMS)は、高熱・筋強剛・意識障害・自律神経症状を特徴とする重篤な薬剤性有害事象である。原因としては…

不完全交差耐性が示唆された症例:ヒドロモルフォンからフェンタニルへのスイッチ

薬剤師夫婦/夫です。 ヒドロモルフォンの効果不十分 ある患者において、強い疼痛に対してヒドロモルフォンを使用したが、十分な鎮痛効果が得られなかった。用量を増加しても痛みの訴えは続き、耐性形成が疑われた。 フェンタニルテープへの切り替え そこで…

ナトリウム125に対する食塩投与設計の評価と注意点

薬剤師夫婦/夫です。 低ナトリウム血症に対してナトリウム補正を行う場面は、特に高齢者や慢性疾患を抱える患者において多い。今回は「Na 125mEq/Lの患者に対して、ソルデム1 200mLに10%NaClを20mL添加し、ポタコール500mLの側管から5時間かけて投与を6日…

尿路感染症にバクタとレボフロキサシンを併用する意義はあるか

薬剤師夫婦/夫です。 尿路感染症の治療において、抗菌薬の選択は耐性菌の発生抑制と副作用リスクの回避という観点から極めて重要である。臨床現場では「併用すればより強力に効くのではないか」という発想が生じることがあるが、実際には必ずしも有効ではな…

高齢者せん妄と薬剤選択 ― ロゼレム®か、デエビゴ®か、抗精神病薬か

薬剤師夫婦/夫です。 症例を起点に 85歳女性。入院中に自分の年齢を誤認し、さらに入院している事実を理解できない状態が出現した。急性かつ変動性を伴うこの症状は、典型的なせん妄である。 高齢者のせん妄に直面した際、薬剤師として注目すべきは「薬剤に…

帯状疱疹治療における内服+外用併用は必要か

薬剤師夫婦/夫です。 1. 帯状疱疹の標準治療 帯状疱疹は水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化によって発症する疾患であり、早期の抗ウイルス薬全身投与が治療の基本である。発症から72時間以内にアシクロビル、バラシクロビル(バルトレックス)、ファ…

ウブレチド長期投与におけるリスク:コリン作動性クリーゼに注意

薬剤師夫婦/夫です。 はじめに ウブレチド(ジスチグミン臭化物)は、コリンエステラーゼ阻害薬であり、排尿障害や重症筋無力症などに使用されてきた薬剤である。しかし本剤は薬理作用が強力かつ持続時間が長いため、長期投与に伴い深刻な副作用を発現する…

インスリン基礎分泌が枯渇した患者におけるグリメピリド少量投与の有効性

薬剤師夫婦/夫です。 はじめに 糖尿病治療において、膵β細胞からのインスリン基礎分泌が枯渇した状態では、血糖管理の基本は強化インスリン療法である。しかし、外来診療の現場では依然としてSU薬(スルホニル尿素薬)が処方される場面もある。その中でもグ…

遅発性ジスキネジアの原因薬と代替の考え方

薬剤師夫婦/夫です。 遅発性ジスキネジアとは 遅発性ジスキネジア(Tardive Dyskinesia:TD)は、長期的に抗精神病薬などを使用した結果、口や舌、手足の不随意運動が出現する副作用である。特に治療が難しく、一度発症すると症状が持続することも多い。し…

おたふくかぜワクの接種間隔とスケジュール

薬剤師夫婦/夫です。 おたふくかぜワクは皮下注 おたふくかぜワクは、生ワクであり皮下注で接種する。添付文書上も「通常、皮下に接種する」と明記されており、筋肉内や静脈内への投与は禁忌である。特に静注は絶対に避けなければならない。 生ワクの接種間…

大腸ステント症例における下剤選択 ― 酸化マグネシウムからモビコールへ

薬剤師夫婦/夫です。 はじめに 大腸ステントは悪性腫瘍などによる閉塞に対して広く用いられる治療手段である。しかしステント留置後も便秘や便塊形成は閉塞・穿孔のリスクを高めるため、適切な下剤選択が重要となる。従来より広く使用されてきた酸化マグネ…

外来メイン薬局における在宅患者訪問薬剤管理指導の算定はなぜ難しいのか

薬剤師夫婦/夫です。 はじめに 薬局業務の中で「在宅訪問指導」を担う場面は増えてきている。制度的には介護保険の「居宅療養管理指導」と医療保険の「在宅患者訪問薬剤管理指導」があるが、実際の現場では介護保険の方が算定されやすく、医療保険は敬遠さ…